>  今週のトピックス >  No.1439
社内公募制度の現状
●  社内公募制は3社に1社が導入
  社内公募制は、従業員の自立性・自発性を尊重し、さらに促進する人事制度である。類似の目的の制度として自己申告制やFA(フリー・エージェント)制度がある。企業での導入状況をみると、「自己申告制」が59.2%、「社内公募制」が34.7%、「経営や事業展開に関する情報公開」が27.2%、「社内におけるキャリア相談」が15.0%、「カフェテリアプラン」が12.9%、「FA制度」が11.6%となっている。自己申告制が約6割の企業に導入されているのに続いて、社内公募制も3社に1社の割合で導入されている。
  社内公募制を導入した理由としては、「自発的なキャリア形成を支援するため」が90.2%であり、ほとんどの企業の導入理由となっている。また「従業員の意欲を高めるため」が82.4%、「新規事業・新規プロジェクトの運営・導入のため」が58.8%、「優秀な従業員を発掘するため」が33.3%、「優秀な従業員の社外流出を抑えるため」が27.5%、「成果主義を導入したことから、従業員自身が仕事を選択する重要性が増したため」が27.5%と、従業員の自立性・自発性、更にはモチベーションを高めるために導入されていることが分かる。
●  公募制はさほど成果があがっていない
  社内公募制の運用方法についてみると、まず応募者の要件は「正社員」としているのが74.5%と、大部分の企業で正社員に限定して運用している。勤続年数を要件とする運用も41.2%と半分に近い。現部署での在籍年数が27.5%、特定の職位が27.5%、年齢が25.5%、一定以上の人事評価があることが17.6%などとなっている。
  社内公募制の成否については、「まあまあうまくいっている」が58.8%、「うまくいっている」の3.9%と合わせると約6割の企業で肯定的な評価をしている。一方、「あまりうまくいっていない」が9.8%、「うまくいっていない」が5.9%と約15%の企業が否定的な回答をしており、「どちらともいえない」と回答した企業も19.6%ある。これは、目を見張るほどの成果が上がっていないことを示している。
●  後ろ向きな公募が4割超
  具体的な問題点としては、「現状逃避的な異動希望がある」が45.1%、「公募で従業員が引き抜かれた部署のモラルダウン」が39.2%、「引き抜かれた部署の人員補充がうまくいかない」が39.2%、「現場の上司が優秀な従業員を抱え込む」が29.4%、「上司に気兼ねして応募しにくい」が27.5%などとなっている。後ろ向きな応募があること、または引き抜かれた部署のモチベーションの低下が問題のようだ。
  社内公募制を導入しない企業のその理由は、「要員計画に支障を来たす」が32.3%、「会社がキャリア形成に沿った異動を行っているため」が28.1%、「社内公募制運用のノウハウがないため」が27.1%、「人事が人事配置を行う方が効率的であるため」が26.0%となっている。
出所:(独)労働政策研究・研修機構「社内公募制等従業員の自発性を促す人事施策」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.05.21
前のページにもどる
ページトップへ