>  今週のトピックス >  No.1446
TOBでの企業買収が急増、株主にはプラス
●  公明正大な手法
  株式公開買い付け(TOB)という手法を使った企業買収が増えている。上場企業の株式を大量取得するための制度で、すべての株主に株を売却する機会が平等に与えられるよう、買い付け価格や株式数、期間、目的を事前に公表する公明正大な手法だ。投資家にとっては所有する株式がより高い価格で売れる機会が増えるのでプラス。最近では先に出たTOBに対して、より好条件の対抗TOBを仕掛けるケースも出始めた。
  ある会社がほかの上場企業を買収しようとするとき、株式取得後の株式所有割合が3分の1を超える場合はTOBという手段を使わなければならない。買収側は被買収側の株主に1株をいくらで買うか公表し、20日以上60日以内の間で期間を設定。その価格に魅力を感じて応募したい株主は、期日までに公開買い付け代理人の本支店で申込書を提出する。
●  通常は市場価格に20〜30%上乗せ
  株主は応募後でも株価が上昇するなどの理由で撤回したいと考えた場合、期間内ならいつでも応募を取り下げられる。買い付け者も期間内ならTOB価格を引き上げられる。目標株式数が集まればTOBは成立。買収側は多くの株主に応募してもらうよう、市場価格に20〜30%の上乗せ(プレミアム)を加える場合が多い。
  TOBは買収企業が被買収企業の株主に応募をお願いするので、被買収企業の経営陣はオーナー経営者でない限りは蚊帳の外だ。経営陣が買われたくないと思っても、株主が買い付け価格に魅力を感じて応募が集まれば買収は成立する。「敵対的TOB」などという場合は経営陣が反対の意を唱えている場合を指すが、経営陣に対して敵対的でも株主が歓迎している場合もある。
●  米シティが日興を買収した手段
  最近の大型TOBはなんといっても米シティグループが日興コーディアルグループに掛けたTOBだ。シティは3月初旬に不正会計処理問題で揺れる日興の支援を決定。日興株の過半以上を取得すると表明し、1株当たり1,700円でTOBを掛けた。これは危機に陥っている日興をシティが支援するのが目的だったので、典型的な「友好的TOB」といえる。結局56%の応募があり、TOBは成立。株式の取得額は9,200億円と、外資による日本企業の買収では最大規模となった。
  敵対的TOBの典型例は米投資ファンド、スティール・パートナーズのブルドックソースへのTOBだ。全株を取得する方針で、応募株式数が予定株に達しない場合も応募分はすべて買い取る方針である。スティールは明星食品にも同様の敵対的TOBを仕掛け、これを救う形で日清食品が対抗TOBを掛け成立した。投資ファンドのスティールは株式をより高い価格で売り抜けることができ、巨額の利益を得ている。
2007.05.28
前のページにもどる
ページトップへ