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中小企業における人材開発の現状
●  必要な人材は中途採用で確保
  中小企業では昨今、人材の獲得が一層困難となっている。また従業員の平均年齢の高齢化もあって、熟練の高い能力・スキルを持った人材が退職し、不足している状況となっている。(独)労働政策研究・研修機構では、中小企業の人材の現状に関する報告書をまとめた。
  まずどのような人材が不足しているかについては、「求める能力を持った人材が一般に不足」しているという回答が63.5%と最も多い。「求める能力を持った人材がいても条件が合わなくて採用が困難」が15.9%、「入職後の教育訓練が不足」が10.7%と続き、必要な能力を持った人材を確保できていないことが分かる。
  必要な人材を確保する手段としては、「経験者を中途採用」が55.2%と過半を占めている。次いで、「新卒者を採用し教育訓練」が24.7%、「外注を活用」が22.2%、「従業員の職種転換」の14.9%と続く。中小企業では新卒を獲得するのは至難の技であり、中途採用に頼らざるを得ないようである。
●  能力開発体制は手薄
  人材を獲得できないのであれば、既存の社員を能力開発しレベルアップすることが求められるが、従業員の能力開発について開発計画を作成している企業は全体の28.8%に過ぎず、65.9%では作成していないと回答している。また人材を育成する能力開発推進の担当を設置しているのは36.9%、設置していないのが60.5%と全体の6割に及ぶ。既存人材のレベルアップ体制についても後手に回っている状況である。
  従業員に対して能力評価を実施している企業は43.9%と半数に近い。行っていないのが55.4%である。能力評価を行う狙いは、「従業員に求める能力開発の明確化」が57.5%、「人事配置の適正化」が41.3%、「人事考課の判断基準」に用いるためとするのが39.4%、「社内人材ニーズの把握」が13.1%などとなっている。積極的な能力開発は難しいものの、従業員に自己啓発を促すとか、最も効率的に人材を配置するなどできる限りの努力は行っているようだ。
●  外部資格を用いて能力を判定
  能力評価の対象となる従業員は全従業員とするのが88.9%と、大部分の企業で全員に対して能力評価を行っていることになる。能力評価の指標とするのが、「国や地方の関係機関などが認定する資格」とするのが86.0%、「民間団体が認定する資格」とするのが45.0%、「社内検定認定制度による社内資格」とするのが20.0%となっている(複数回答)。これは従業員に能力開発の目安を示すことにつながっている。
  いずれにしても、中小企業は人材の獲得はもとより、能力開発についても十分な対応ができているとはいえない状況のようだ。
出所:(独)労働政策研究・研修機構「中小企業における人材育成と能力評価」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.06.04
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