>  今週のトピックス >  No.1449
起業する女性にとっての課題は、家庭との両立
●  女性が柔軟な働き方を求めて起業する割合は男性の約2倍
  厚生労働省から2006年(平成18年)版の「働く女性の実情」(女性労働白書)が発表された。これによると、女性が柔軟な働き方を求めて起業する割合は男性の約2倍にのぼることが分かった。この白書は、同省雇用均等・児童家庭局が、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、女性の就労状況や求人、求職状況など「働く女性の実情」として紹介しているものである。今回は、女性の起業についての現状分析をしており、なかなか興味深い内容となっている。
  労働力人口が減少している現状にあって、女性の社会進出は大変喜ばしいことである。実際、女性の労働力人口は3年連続で増加し、労働力率は48.5%と2年連続で上昇している。
  特に最近は、起業する女性が増えており、実際に女性の社長にお会いするケースも大変多くなってきた。起業は、自己の時間の都合をつけやすい、経験を活かしたり関心のある分野で能力発揮ができたりするということもあって女性の働き方の一つとして注目され、特に、出産・育児などで1度就業を中断した後の女性の再就業の形態の1つとしてその意義が高まっている。しかしながら、起業した女性にとって、起業後の家庭との両立に関する満足度は必ずしも高くないのが現状である。
●  起業する女性が感じている問題点
  白書によれば、平成18年の女性の就業者数は2,652万人となっており、4年連続で増加している。このうち、自営業主は160万人で、女性の就業者総数に占める割合の6.0%となっている。また、農林漁業を除いた産業別に自営業主数(内職者を除く。)を見ると、「サービス業(他に分類されないもの)」(41万人)、「卸売・小売業」(25万人)、「飲食店,宿泊業」(23万人)が多くなっている。特に、「サービス業(他に分類されないもの)」においては3人に1人が女性となっており、女性が起業するにあたり最も適した業種であるようだ。
  次に、新規開業者(内職者を含む。)の年齢階級別割合をみると、女性は男性に比べ全体的により若い層での起業が多くなっている。そのためか、女性起業者は管理職や経営の経験者が男性よりも少なく、管理職以外の正社員やパート・アルバイトが多い。また、起業前の就業中断期間は男性よりも長い傾向がある。実際に、起業希望者の現在の就業状態別にみると、男性は有業者が79.7%を占めるのに対し、女性は54.6%が無業者であり、女性は2人に1人が無業の状態から起業を希望していることがわかる。このため、起業時の問題として、「起業や経営の知識・ノウハウが不足」と、「同じような立場の人(経営者など)との交流の場がない」が挙がっており、女性の管理職・経営経験などの少なさや、前職に関連した人的ネットワークの少なさを反映しているといえよう。起業後の問題としては「家事や育児等との両立が難しい」が女性で6.5%となっているのが特徴的である。
●  家庭との両立支援が女性の起業の鍵
  女性が起業の目的として挙げているのが、「年齢や性別に関係なく仕事をするため」「家事や子育て・介護をしながら、柔軟な働き方をするため」である。しかしながら、従業員を雇う自営業主の就業時間は女性でも長い傾向がみられる。本格的な起業となると、育児、家事、介護などを担うのはいまだに女性が圧倒的な状況にある中で、その両立に悩む女性起業者が大変多い。
  育児・介護休業法の改正などの育児支援に関する法整備などにより女性が働きやすい環境が整ってきているが、起業する女性への環境整備はまだまだである。女性の起業は、生活経験を活かしたり地域密着型の起業の場合が多く、地域を活性化する鍵ともなりうる。
  適切な支援策を講じることにより、女性の起業は今後、社会に大きな活力を与える可能性を秘めている。
出所:厚生労働省「平成18年版 働く女性の実情」(女性労働白書)
(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/04/h0420-2.html#top)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.06.04
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