>  今週のトピックス >  No.1459
がん対策計画の立案
●  がん死亡の20%削減をめざす
  2006年に成立したがん対策基本法に基づき、その対策推進基本計画が策定された。がんは1981年以来、日本人の死因の第一位であり、年間30万人以上の死亡者がある。今後人口の高齢化によりますますがんでの死亡リスクが高まることから、がん予防・がん治療の対策が求められてきた。
  毎年新たにがんにかかる人数は50万人以上、現在がんの治療を受けている患者が140万人以上とされている。こうした「国民病」ともいえる状況の中で、2007年度から5年間ががん対策推進期間とされ、今後都道府県ごとに計画が立案される予定である。
  計画の目標は、がん死亡者数の減少とがん患者のQOL(クオリティオブライフ)の向上である。がん死亡者数の減少については、死亡者の20%削減を目標としている。
●  家族の精神的苦痛も除去へ
  具体的な取り組みはいくつか挙げられており、まずがん専門医師の育成がある。大学においてがん診療教育を新設・充実させる、主要な病院においてがん治療専門の部署を設置し、手術、放射線治療、化学療法などを効果的に組み合わせた治療ができる環境を整備していく。
  日本は手術の水準は高いとされているが、放射線治療や化学療法は国際的に見てレベルアップを図るべき水準とのことである。抗がん剤についても国際的には承認されている医薬品が日本では未承認という例も多く、早期に承認審査をできる体制整備も求められている。
  QOLを高める緩和ケアについては、ターミナルケアにとどまらず、治療中の段階から適切に提供されるべきであるという認識に立っている。また本人だけでなく家族の精神的苦痛の軽減・除去にも目が向けられている。
●  がん患者のQOLも向上へ
  緩和ケアは病院だけでなく、ホスピス・緩和ケア病棟、在宅医療支援診療所など横のネットワークを広げていく。従来医師からは軽視されてきた緩和ケアの重要性を認識させるとともに、その知識やスキルを習得できる研修を推進していく。10年以内のがん治療にかかわるすべての医師が緩和ケアの知識を習得することを目標としている。
  在宅療養においては訪問看護の看護師の確保を推進する必要があり、ターミナルケアで求められる24時間体制を可能とする人材や事業所の整備を進めていく。また、がんの苦痛を緩和する医療用麻薬についても国際的には使用量が少ないとされており、広く使用しやすい法的環境を整えていく。
  がん治療にかかわる診療ガイドラインについては、部位別にすでに完成しており、今後はその情報周知を図っていく。
●  禁煙支援も推進
  こうした医療レベルの向上とともに、がんの予防や早期発見についても同時にすすめる。予防は禁煙支援が柱である。早期発見についてはがん検診の受診率の向上を図っていくこととされている。
出所:厚生労働省「がん対策推進基本計画」(平成19年6月)
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.06.25
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