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査察での告発件数は2000年度以降最多の166件
〜2006年度査察白書〜
●  査察での脱税総額は304億円
  いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が公表した今年3月までの1年間の2006年度査察白書によると、査察で摘発した脱税総額は前年度を30億円上回る304億円だった。検察庁に告発した件数も前年度を16件上回る166件と、2000年度以降最多となり、脱税額の小粒化は続いているものの、悪質度が増していることがうかがえる。
  2006年度1年間に全国の国税局が査察に着手した件数は231件(前年度217件)、継続事案を含む221件(同213件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち75.1%(同70.1%)にあたる166件を検察庁に告発した。告発分1件あたりの脱税額は前年度より1400万円多い1億6700万円。告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは同1件増の17件、5億円以上では同3件増の8件だった。
●  消費税関連の告発件数が2.3倍増
  近年は大口事案が減少しており、2006年度の脱税総額304億円は、ピークの1988年度(714億円)に比べ4割強にまで減少している。告発件数166件、その脱税総額278億円のうち、法人税は前年度より8件少ない78件だったが、脱税額は16%増の約118億円と、構成比は最も高い。所得税は12件増の59件、76%増の約108億円、消費税は2.3倍増と大幅増加の23件となり、脱税額も86%増の約21億円に達した。
  告発件数の多かった業種(5件以上)は、「人材派遣業」(13件)、「キャバレー・飲食店」(12件)、「建設業」(12件)、「商品・株式取引」(9件)、「鉱物、金属材料卸」(8件)、「パチンコ」(6件)の順。トップの「人材派遣業」は前年度の6件からほぼ倍増しているが、人件費を外注費に科目仮装することによる消費税の脱税が目立ち、消費税に係る告発件数が大幅に増加した要因となっている。
●  実刑判決での平均懲役月数は16.4カ月
  査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としている。刑罰とは懲役や罰金だが、実をいえば、以前は実刑判決がなかった。つまり、執行猶予と罰金刑で済んでいたのだが、懲りない面々に対し“一罰百戒”効果を高めるため、1980年に初めて実刑判決が出された。以降は毎年実刑判決が言い渡されている。
  2006年度においては、一審判決が言い渡された160件のすべてに有罪判決が出され、うち14人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡された。平均の懲役月数は16.4カ月、罰金額は約2700万円だ。査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれている。また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながる。査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありうるわけだ。
  ちなみに、刑罰は5年以下の懲役または500万円(脱税額が500万円を超える場合は脱税相当額)以下の罰金となるか、あるいは懲役と罰金の併科となる。
  上記のように、2006年度中に検察庁への告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は221件で、このうち検察庁に告発した件数は75.1%にあたる166件と、2000年度以降最多となった。最近5年間の告発率はすべて70%台で推移している。つまり、査察の対象になると、約7割は実刑判決を含む刑事罰の対象となるということだ。くれぐれも甘い考えを起こさないでいただきたいものだ。
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.07.02
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