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療養病床削減の受け皿となる新型老健
〜報酬設定前倒しに見る医療・介護の行方〜
●  新型老人保健施設の位置づけ
  医療型・介護型をあわせた療養病床を2012年度までに大幅削減するという国の方針に対し、その受け皿づくりのピッチを速めるべく、様々な施策を前倒しする動きが見えている。
  昨年9月厚生労働省内に設けられた「介護施設のあり方に関する委員会」では、全廃される介護保険対応の療養病床を中心として、その受け皿となる施設の仕組みを検討することが主なテーマとされてきた。特に医療を強化した、いわゆる新型老人保健施設についてのあり方が大きなポイントになっている。
  この新型老健の位置づけについては、同委員会が6月までにまとめた報告書によれば、(1)従来の老健施設については「これまで通り入所者の居宅復帰支援の強化に向けた取組みを進めていく」とし、(2)新型老健については「一定の医療ニーズを有する入所者に適切な医療サービスを提供するため、夜間等の時間帯の対応や看取りへの対応等が必要」という具合に位置づけられている。
  この新たな受け皿が、利用者の不安を解消するだけの機能を有するのかどうかついては、介護報酬や人員・運営基準等が正式に決まった後に改めて考察したいと思う。
●  1年前倒しでスタートする新制度
  現段階で注目すべきは、この新型老健に関する介護報酬について07年度中に検討を行うとしている点だ。これは08年度から新制度をスタートするということに他ならず、09年度に予定される介護報酬改定から1年前倒しすることを意味している。
  ちなみに、削減される療養病床の受け皿としては、医療法人の参入が可能になった有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅など(これらは介護保険法においては、特定施設サービスの対象として位置づけられている)も大きな候補として挙がっている。
  この場合、併設する診療所から有料老人ホームなどに対して在宅医療が提供されることになるが、この報酬についての見直しが中央社会保険医療協議会で進められている。こちらも診療報酬にかかる部分なので、08年度からの施行が予定されている。
  一方、新型老健の場合、昼夜問わず医療依存度の高い入所者の受け入れが想定される。この場合の夜間の医療提供に関しては、報告書によれば、老健内の医師へのオンコールのほか外部の医療機関からの往診で対応することが示されている。つまり、施設内に配置された医師以外からの医療提供の必要性が大きくなるという点で、他の受け皿と同様に診療報酬の設定が必要になるわけだ。
  この整合性をとるべく、診療報酬の改定にあわせた08年度からのスタートという流れになったと見ることもできるだろう。
●  特別養護老人ホームへの医療法人参入
  ちなみに、もう一つの受け皿として想定されている「特別養護老人ホームへの医療法人参入」に関して、08年の国会において老人福祉法の改正案が提出される予定である。新型老健や特養など医療法人の多角経営を想定した場合、特養参入を可能にする法改正をスムーズに通過させるためにも新型老健の制度スタートを前倒しする必要があるというわけだ。
  この流れを見ると、介護施設が医療施設の代替えとしてますます変節していく様子が浮かび上がる。一連の政策的なタイミングは、これからの医療と介護のあり方を占ううえでの象徴と見ることもできるだろう。
(田中 元 医療・福祉ジャーナリスト)
2007.07.09
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