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税務訴訟での国側の敗訴割合は高水準の17.9%
●  異議申立ての救済割合は3.4ポイント減の10.2%
  納税者が国税当局の処分に不満がある場合は、税務署などに対する異議申立てや国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、さらには訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度がある。
  国税庁・国税不服審判所が公表した不服の申立て及び訴訟の概要によると、今年3月までの1年間(2006年度)における税務訴訟での国側の敗訴割合は過去2番目に高水準の17.9%だったことが分かった。
  異議申立ての発生件数は、源泉所得税事案が前年度の94件から185件とほぼ倍増したものの、申告所得税(対前年度比15.5%減)や法人税(同12.5%減)などが1割以上減少したため、全体では前年度から4.4%減の4,301件だった。
  処理件数は、「取下げ」870件、「却下」369件、「棄却」2,377件、「一部取消」342件、「全部取消」69件の合計4,027件だった。納税者の主張が一部でも認められた「一部取消」と「全部取消」の合計は411件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を3.4ポイント下回る10.2%だった。
●  審査請求の救済割合は2.5ポイント減の12.3%
  また、税務署の処分を不服とする国税不服審判所への審査請求の発生件数は、徴収関係は前年度比115.0%増と大幅に増えたものの、それ以外の課税関係事案は申告所得税が同16.6%減、消費税等が同24.4%減、法人税等が24.9%減などすべて減少したことから、前年度から15.5%減少の2,504件となった。
  処理件数は、「取下げ」373件、「却下」329件、「棄却」1,882件、「一部取消」270件、「全部取消」91件の合計2,945件だった。納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は12.3%で、前年度より2.5ポイント減少している。
●  全体を通して納税者の主張が認められた割合は2.3ポイント減の11.5%
  一方、2006年度中に訴訟となったのは、前年度を1.8%上回る401件だった。終結した447件の内訳は、「取下げ」53件、「却下」16件、「棄却」298件、「国の一部敗訴」29件、「国の全部敗訴」51件だった。「国の一部敗訴」と「国の全部敗訴」の合計が終結件数に占める国側の敗訴割合は17.9%と、前年度に比べ8.6ポイントも増加し、ここ10年間では最も高く、過去2番目の高水準となった。これは、ここ数年のストックオプションの加算税賦課関係事件の敗訴19件、少額減価償却資産に関する事件の敗訴9件が影響していると見られている。
  これらの結果、2006年度中に異議申立て・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計7,419件のうち852件で、その割合は11.5%と、前年度に比べ2.3ポイント減少している。
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.07.09
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