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「勤労者心の電話相談」に年間約2万3千件
●  相談件数は、前年度と比較して21.9%増加
  独立行政法人労働者健康福祉機構(理事長 伊藤庄平)は、6月26日「勤労者心の電話相談」の相談件数や相談内容を取りまとめ発表した。「勤労者心の電話相談」は、労働環境の急激な変化に伴い、職場におけるストレスが増加していることや自殺者数が急激に増加していること(平成10年以降は3万人超で推移)などの状況を踏まえ、勤労者やその家族が抱える心の問題について助言などを行うため、平成12年から専門のカウンセラーにより実施している。無料で相談できるということもあり、平成18年4月から平成19年3月までの1年間に、全国20の労災病院に併設している勤労者予防医療センター及び勤労者予防医療部で実施した勤労者及びその家族等からの相談件数は、23,385件で、前年度の19,178件に比べ21.9%増えている。
●  職場の問題は、「上司との人間関係」がトップ
  相談内容は、職場の問題、精神の問題、体調の問題と大きく3つに分けることができるが、職場の問題では、「上司との人間関係」に関する相談が2,228件と最も多く、次いで「同僚との人間関係」に関する相談が1,526件、「その他の職場における人間関係」に関する相談が1,289件となっており、職場における人間関係についての相談が多くなっていることがよくわかる。「仕事の質や量」「社内いじめ」についての相談もあったが、それほど目立つものではなく、職場の人間関係に深く悩む現代日本人の気質のようなものがあらわれているといえる。
  また精神の問題では、「将来に対する不安感」が7,479件と最も多く、次いで「落ち着けない」が5,843件、「イライラ・不安感」が4,367件となっている。体調の問題では、「不眠」が2,268件と最も多く、次いで「疲れやすい」が1,589件、「慢性的疲労感」が1,271件となっている。「不眠」や「疲れやすい」といった悩みの相談は、社内で相談窓口などを用意しているところも中にはあるが、割合はそれほど多くない。実際にあったとしてもなかなか利用されていないのが現状ではないだろうか。逆に相談する側も社内や会社契約の相談センターでは話しにくいということもあるだろう。そのようなことを考えると「勤労者心の電話相談」の果たす役割は、大きいといえる。
●  メール相談は、その気軽さの反面、カウンセラーの対応は難しい
  今後も心の悩みの相談が増加していくと予測される中で、相談を受ける側の専門家のスキルも時代にあわせて高度なものが求められるようになる。特にメールでの相談に対応するのは、直接話して助言するのとは違いかなり難しい。メールだと相談しやすい気軽さもあるので、複数回相談してくる可能性も高いと思われる。そういう意味でもカウンセラー担当者内での情報の共有とスキルアップのための研修には力を入れていただきたいところである。
  各上場企業がここ数年業績をアップして、景気のいい話が紙面をにぎわすこともある反面、現場の従業員たちの一部は、今回の調査のとおり職場の人間関係に悩み、将来に対して不安を抱き、不眠や疲労について苦しんでいる。企業側は、この調査結果をふまえて、従業員のストレスのもとになっている要因を取り除くために、今まで以上により良い職場環境作りを積極的に実行していく必要があるのではないか。
出所:独立行政法人労働者健康福祉機構 「勤労者心の電話相談」
(http://www.rofuku.go.jp/kanrenshisetu/pdf/h19kokoro_sodan_press.pdf)
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.07.17
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