>  今週のトピックス >  No.1475
確定拠出年金の見直しの方向性
●  企業年金があっても個人型に加入可能に
  2001年10月、2002年4月に、確定拠出年金と確定給付企業年金が相次いで施行されて5年が経過した。厚生労働省ではこれらの新しい企業年金の状況を検証するため、年金局長の諮問機関として企業年金研究会を設置したが、このほどその報告書がまとまった。ここでは、そのうち確定拠出年金に関する報告で、かつ従来とは異なる報告となった部分を抜粋して報告する。
  まず加入対象者については、これまで企業年金(適格企業年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)、企業型確定拠出年金(企業型年金)を実施していない企業の従業員のみ、個人型年金に加入することができた。しかし、これにより企業年金と企業型確定拠出年金を併用する企業の従業員と、企業年金のみ採用する企業の従業員では、老後の所得保障に格差が発生することとなった。よって今後は企業年金を採用していても企業型年金を採用していない企業の従業員にも個人型年金の加入を認める方向で検討すべきとされている。これにより企業型年金に加入していない従業員は、個人型年金に加入できることになる。
  また、現在加入対象となっていない専業主婦(国民年金の第3号被保険者)および公務員については、加入の是非は引き続き検討することとなった。
●  マッチング拠出可能へ
  最大の課題であるマッチング拠出(企業型年金において企業拠出に加え、従業員個人拠出も認める)については、これまでは今後の検討課題という位置付けだったが、この報告では個人拠出を認める前提で具体的に検討すべきとしている。その理由として、企業年金ではすべて個人拠出が認められていること、企業拠出だけでは老後資金準備としては不十分であることなどが挙げられている。拠出限度額については、現行の23,000円または46,000円という限度額は引き上げることなく、限度額内で企業拠出と個人拠出を認める考えである。
  さらに個人拠出額の所得税法上の取扱は、個人型と同等の所得控除とすべきとされている。
  投資教育については、現行法制では継続教育が明記されていないことから、今後努力義務を課すべきとしている。
  また企業型年金、個人型年金とも、60歳までしか掛け金を拠出できないが、65歳までの雇用延長が義務付けられているなかで、60歳以降も雇用されているものについては、拠出を可能とすべきとしている。
出所:厚生労働省「企業年金制度の施行状況の検証結果」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.07.23
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