>  今週のトピックス >  No.1478
ブルドックソースの買収防衛策発動、市場への影響は限定的
●  抜かずの宝刀、日本初のケース
  ブルドックソースが米ファンドのスティール・パートナーズに対する買収防衛策を発動した。「抜かずの宝刀」に例えられる新株予約権を利用した防衛策の発動は日本では初めてで、世界でもほとんど例がない。ただ今回のケースはスキームや経緯が特殊で、今後も同じような防衛策が出てくるとは考えにくく、市場への影響も限られそうだ。
  まずは経緯をおさらいしておこう。事の始まりはブルドック株を大量保有していたスティールが5月に株式公開買い付け(TOB)を提案したことだ。これに対してブルドック経営陣は6月上旬にTOB反対を表明。新たに考案した買収防衛策を6月下旬の株主総会に諮り、3分の2以上の賛成が得られれば防衛策を発動すると発表した。
●  スティールは濫用的買収者
  ブルドックの考えた買収防衛策は、まずスティールを含む全株主に1株につき3個の新株予約権を無償割り当てる。新株予約権とは、あらかじめ決めた価格で株式を取得できる権利で予約権を行使すると、権利者は株式を取得できる。特例なのはスティールだけが予約権を行使できない点。ブルドック側が予約権1個につき当初のTOB価格の4分の1に当たる396円(総額は約23億円)で買い取る。これによってスティールの持ち株比率は、約10%から3%弱に低下する。
  この防衛策は「株主平等原則に反する」という声や、23億円の現金が流出し既存の株主に不利という声があり、様々な反響を呼んだ。運命の6月24日、株主総会。ブルドック経営陣は安定株主などの票を固め、8割超の賛成で防衛策発動が可決した。スティールは新株予約権発行の差止請求を出していたが裁判所はスティールを、企業価値をおとしめる「濫用(らんよう)的買収者」と認定しこれを却下した。
●  まさに「盗人に追い銭」
  これまでの経緯をみると、ブルドック側の完全な勝利といえる。スティールは日本で濫用的買収者という最悪のレッテルを付けられ、企業の株を買い占めて揺さぶりをかけるような行動を取りにくくなる。保有銘柄の株価も軒並み下落し、経済的な損失も被った。
  ただ、勝負はまだ終わっていない。今回のスキームの最大の欠陥は千日手になることが考えられる点だ。スティールは手にした23億円の現金でさらにブルドックの株を買い増すことができる。たとえまた防衛策が発動しても同じことを繰り返せば、株価次第で保有比率を高めていくことができるのだ。ブルドックの側に立てばまさに「盗人に追い銭」となる。
  一部ではこのような買収防衛策が認められたことで、外国人投資家の日本株買いが鈍り、市場全体への影響が出るとの声もあるが、筆者はそうは思わない。今回は極めて特殊なケースで、世界の市場からみればスティールもブルドックも「小者」だ。賢い外国人の機関投資家は好業績で割安な企業の株を冷静に買い続け、業績不振・割高なら売るだけである。
2007.07.23
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