>  今週のトピックス >  No.1479
進む企業年金の切り替え
●  厚生年金基金は確定給付企業年金へ切り替え
  企業年金大改革の年であった2001年には確定拠出年金法と2002年の確定給付企業年金法の施行および厚生年金基金の代行返上の開始があり、その後5年が経過した。その間に株式市場の低迷を脱して企業年金の運用利回りも改善し積立不足も激減した。また雇用においてもリストラの時代から一転、人材確保の時代になるなど、企業年金を取り巻く環境は一変した。それを受けて、確定拠出年金、確定給付企業年金などの新しい企業年金はようやく定着をしたといえる状況となった。
  最盛期には1,900件近くあった厚生年金基金は、代行返上が進んだ現在(2007年7月1日時点)では、従来の基金の形態のまま存続しているのは630件(2006年7月時点では651件、2006年1月時点では669件、2004年12月では736件)、630件のうち総合型が511件と大部分であり、単独型・連合型はほとんど代行返上を終えている。また加入事業所が12.9万もあることから、厚生年金基金はもはや中小企業のための年金といっても言い過ぎではない。
  将来部分だけでなく過去部分の返上も終えて確定給付企業年金に移行した基金が796件。これまで解散した基金が502件で最盛期の1/4以上にあたる(代行返上した後の解散も含む)。最盛期に1,200万人以上いた加入者数も、現在は約525万人と半分以下となった。確定給付企業年金1,944件のうち、代行返上によって厚生年金基金から確定給付企業年金に切り替わった件数は上述の796件であり、確定給付企業年金の半分弱を占めている。切り替わった796厚生年金基金のうち、606件は基金型の確定給付企業年金に移行している。
●  適格年金から最盛期の半分へ
  2012年3月で制度が終了することが決まっている適格退職年金は、最盛期は92,467件だったが、2007年3月末時点では38,885件(2006年3月末では45,090件、2005年3月末では52,761件、2004年3月末では59,162件)と、最盛期の半分以下まで減少している。また1,078万人だった加入者数も、現在は506万人とやはり半分以下に減少している。
  制度終了後の受け皿の制度には、確定給付企業年金、確定拠出年金、中小企業退職金共済(以下、中退共)がある。企業型確定拠出年金は、2007年5月末現在で規約数は2,357件、加入者数は約242万人である(2007年4月末現在)。株式市場の好調を背景に規約数、加入者数ともに急増している。また前回の本欄で報告したとおり、制度の見直しの提言も出されており、一層普及にはずみがつくと予想される。
  新しい企業年金である確定給付企業年金は1,944件(2007年3月現在)である。そのうち、厚生年金基金からの移行を除いた新設の件数は1,148件である。確定給付企業年金制度の発足当時は、そのほとんどが厚生年金基金からの移行によるものだったが、ようやく新設数が移行数を追い抜いた。加入者数は2007年3月現在で430万人である。
  また適格退職年金から中退共に資産が移換された件数は、2007年5月末で12,182事業所、加入者数は約35万人である。
  確定給付企業年金、確定拠出年金、中退共は企業年金改革の受け皿として機能を発揮してきた。
出所:企業年金連合会「企業年金の現況」、厚生労働省「確定拠出年金連絡会議」、
中小企業退職金共済事業本部
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.07.30
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