>  今週のトピックス >  No.1487
自治体職員のメンタルヘルス
●  自治体職員でもメンタルヘルスが増加
  メンタルヘルスの悪化が企業内で問題となり、その対策が急がれているが、実際には官公庁の方が問題も大きく、対策も遅れていると聞く。その理由は、「縦割り」「縄張り」「前例主義」という言葉に見られる、組織員の自発的で前向きな取り組みを阻害する組織風土によるストレスが大きいという。また自治体職員である場合は、常に住民の目を意識しながら仕事を進めることもストレスを大きくする要因といわれる。特に一部住民からの自治体への要望や申し入れは凄まじいものがあるという。また近年では市町村合併も影響しているという。さらにいえば、メンタルヘルス対策の予算獲得が難しく対策が進んでいないようである。
  社会経済生産性本部では、毎年メンタルヘルスに関する調査を行っているが、今年は自治体職員を対象にした調査を行った。
  「ここ3年間で心の病が増加しているか」という問いには、「増加傾向」という回答が5割近くにのぼる。職員数の多い自治体ほどその傾向が強く、1,000名以上の自治体では64.7%、3,000名以上では78.6%に及ぶ。今後の傾向についても、「今後も増加する」42.1%、「横這い」23.9%、「分からない」29.3%で、「減少する」との回答はわずか1.8%である。
  心の病の年代層を見ると、30代が34.4%、40代が30.8%であり、一般に30代にその傾向が強いといわれるのと一致している。「現在休職者がいる」という自治体は53.4%、3,000名以上の自治体だけなら100%の回答率である。
●  職場の人間関係の希薄化も悪化の原因
  心の病の原因となる職場の環境変化については、「行政に対する住民の視線が厳しくなっている」という問いに対して、「そう思う」82.3%、「ややそう思う」15.3%の回答である。また「一人あたりの仕事量が増えている」が「そう思う」59.7%、「ややそう思う」が34.9%、「個人で仕事をする機会が増えている」が「そう思う」が27.9%、「ややそう思う」が43.9%と、職場の環境が厳しさを増していることが分かる。
  住民の目の厳しさ、組織の風土、市町村合併が職場内のストレスを高めているが、それが心の病にまで至るのは、職場の人間関係の希薄化が大きい。
  この調査でも「心の病が増加傾向にある」と回答した自治体では、「職場で助け合いが減った」という設問でも「そう思う」「ややそう思う」を合計して56.3%、「職場のコミュニケーションが減った」が54.3%、「職場での議論が減った」が52.6%、「個人で仕事をする機会が増えた」が49.8%、「一人あたりの仕事量が増えた」が48.4%と、心の病の増加を許すのは職場の人間関係の弱さにあるようだ。
出所:(財)社会経済生産性本部「メンタルヘルスへの取り組みに関する自治体アンケート調査結果」(平成19年7月)
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.08.13
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