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経営者が知っておきたい傷病手当金の基礎知識
●  意外と知らない傷病手当金制度
  会社の政府管掌健康保険あるいは健康保険組合に加入している方などは、病気にかかったりしたときは、健康保険証を使って治療を受けております。しかしながら健康保険制度には、通常の治療や薬局で給付を受けるとき以外にも実はたくさんの給付制度があります。
  実際には、そういう制度があるということを知ってはいるが、細かいところまでは知らないので、使いこなせていないというのが本音のようです。経営者にとっても被保険者にとってもそのようなお得な制度を知らないのでは、結果的に損をすることになってしまいますので、今回はその給付制度の一つであります「傷病手当金」についてご紹介したいと思います。中小企業の経営者は、そんな制度知らなかったという方が結構いらっしゃいますので、今回は傷病手当金の基本的な知識と法律の改正事項について分かりやすく解説していきたいと思います。
●  傷病手当金は、法改正により支給額アップ
  被保険者が病気やケガの療養のため仕事に就くことができず会社を休み、給与が受けられないときは、その間の被保険者やその家族の生活を保障するため、傷病手当金が支給されます。期間は、最大で支給を開始してから1年6カ月間となっており、とても被保険者にとってはありがたい制度でありますが、この平成19年4月より健康保険法の改正があり、支給される傷病手当金の給付の額が、これまでは1日あたり被保険者の標準報酬日額の6割でしたが、4月以降1日あたり標準報酬日額の3分の2に相当する額に引き上げられました。
  仮にお給料の額面が30万円(通勤費込)だった被保険者の場合、日数単価が、今まで6,000円だったのが、6,667円になるということです。標準報酬日額の3分の2(6,667円)×日数分が実際には支給されるのですが、仮にマックスの1年6カ月間、傷病手当金をもらった場合、今回の改正で受給額は総額で、約361万円になります。法改正の結果、以前よりも約365,000円も支給額が増えることになりました。他の社会保険制度に関する法律では、被保険者が不利になる変更が多い中でとても明るいニュースでしたので、この点に関してはしっかり押さえておきたいところです。
●  傷病手当金は、休んでいる間に給与を受ける場合支給の調整あり
  しかしながら、この傷病手当金の恩恵をまるまる受けることができない方も中にはいらっしゃいます。そもそも傷病手当金は、連続して3日以上勤めを休んでいるときに、4日目から支給されるものですが、会社によっては、休んでいる間についても同じように給与が支払われる場合もあります。そのような場合には傷病手当金は、支給されず、また傷病手当金の額以上の給与を受けている場合にも、同様に傷病手当金は支給されません。
  また休んでいる期間について、全額ではなく、4割だけ給与が支給される会社の場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されることになっています。このようにちょっとだけ複雑なところもありますが、基本的な考え方だけ理解しておけば問題ありません。
  いずれにしても傷病手当金をはじめとする保険給付は、請求してはじめて支給されるものですので知らなければ損をするのは、自分です。せっかく高い保険料を納めているのにと強く思っている経営者には、ぜひとも知っておいていただきたいことです。
  最近は、精神疾患関連の傷病手当金の支給申請がかなり多くなっていますが、経営者自らが病気になっても当然貰えます。入院などで仕事ができず、役員報酬が支払われないということになれば、当然要件には該当しますので、その際には専門家にご相談のうえ慎重に取り組んでいただきたいと思います。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.08.13
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