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少額減価償却資産を取得した場合の優遇措置
●  「新品」「中古」を問わず適用できる少額減価償却資産の特例
  固定資産の場合は通常、法定耐用年数に応じて減価償却費として損金経理するが、少額のものは取得時に、その取得価額の全額を損金算入(即時償却)することが認められている。青色申告書を提出する中小企業者等の場合、取得価額30万円未満の減価償却資産から適用できる特例が、2003年度税制改正で創設された。中小企業以外の事業者が一時に損金算入できる少額減価償却資産は、取得価額10万円未満のものとなる。
  この30万円未満の減価償却資産に対する特例は、2006年度税制改正において、対象資産の取得価額の合計額が年間300万円を上限とされ、適用期限が2008年3月末まで延長された。また、この対象資産は、「新品」「中古」を問わず、取得価額が30万円未満であれば認められる。しかも、事業年度の途中で取得した場合にも、通常の減価償却のように「月数按分」ということはせずに、全額損金算入できる。
●  選択肢が多い中小企業者等
  中小企業者等が少額の減価償却資産を取得した場合は、この取得価額30万円未満の減価償却資産に適用できる少額減価償却制度以外にも、取得価額10万円未満の減価償却資産であれば即時償却を、また、取得価額20万円未満の減価償却資産であれば3年均等償却(1/3の年償却)できる一括償却制度(すべての事業者が対象)をそれぞれ選択できる。もちろん、通常の減価償却制度も選択肢の一つとなる。
  そこで、具体例を示せば、中小事業者が期首にパソコンを1台18万円(税込)で購入した場合(消費税の会計処理は税込方式)、その事業年度に損金経理できる金額は、@少額減価償却制度による即時償却では「18万円全額」、A一括償却制度では「18万円×1/3=6万円」、B通常の減価償却では「18万円×0.625(定率法:法定耐用年数4年の償却率)≒11万円」となる。
●  少額減価償却資産の会計処理には注意が必要
  ところで、少額減価償却資産の会計処理で留意すべきことの一つに、地方税の固定資産税との関係がある。中小企業者等が取得価額30万円未満の資産を取得した場合、上記のように通常の減価償却以外に選択肢が三つあることになる。
  特に取得価額10万円以上20万円未満の資産を取得したケースでは、特例を適用して即時償却するか3年均等償却するか迷うところだ。もちろん、その事業年度の課税所得などが大きな判断材料となろうが、それ以外に考慮したいのは地方税の固定資産税との関係だ。というのも、少額減価償却資産が固定資産税の課税客体となるかどうかは、選択した会計処理によって異なるからだ。
  固定資産税は、通常の減価償却では当然課税客体だが、一時に損金算入された10万円未満の資産や3年均等償却を選択した10万円以上20万円未満の資産にはかからない。ところが、中小企業者等のみに適用される30万円未満の資産の即時償却を選択した場合は、10万円未満の資産を除き固定資産税がかかる。
  こうしたことから、少額減価償却資産の会計処理は、固定資産税も考慮に入れた判断が必要になってくるわけだ。
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.08.13
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