>  今週のトピックス >  No.1494
サブプライムローン問題、信用危機に発展
●  テロ以来の緊急資金供給
  信用力の低い個人向けの米住宅融資、いわゆる「サブプライムローン」の焦げ付き問題が世界の金融市場を揺さぶっている。サブプライムローンを組み込んだ金融商品を大量に買っていた欧米のヘッジファンドが相次いで破たん。事態は2001年の米国同時テロ以来となる日米欧の大規模な緊急資金供給に発展し、世界的な信用不安が起こっている。
  サブプライムローンとは、クレジットカードの延滞を繰り返すなど信用力の低い個人を対象とした住宅融資のことだ。最大の特徴は通常融資より審査基準は緩い点。一般のプライムローンは借り手の所得が書類で完全に証明されているのに対して、サブプライムの借り手は提出書類が2割程度ですむ。過去1年間に返済遅延がある、融資比率が高い、所得に占めるローンの支払い比率が通常3−4割というのも借り手に共通する特徴だ。当然、金利負担は年を追うごとに重くなる。
●  世界の投資家が購入
  これほど焦げ付きの危険が高い借り手に金融機関がこぞって貸し出しをしていたのは、世界的なカネ余りで、金融機関の貸し出し競争が激化していたからだ。米国の金融機関の主要な貸し先はリストラを進めた企業セクターから住宅ローンに移行。2003年ごろからサブプライムローンの貸し出しが急速に伸びた。
  移民の流入が続く米国では2000年ごろから住宅価格の急上昇が続いていた。住宅価格の上昇分を担保に金利の低い通常のローンに借り替える人が多かったが、06年半ばごろに住宅価格が調整局面に入ると、徐々にローンを返せない人が増えていった。
  問題が住宅ローンにとどまれば、これほど世界経済に影響を与えることはなかった。ところが、最近は金融技術が発達しており、サブプライムローンのようにリスクの高いローンのほとんどは証券化され世界の投資家(ヘッジファンドや金融機関など)にばらまかれている。
●  実態はよくわかっていない
  サブプライムローンを組み込んだ金融商品はリスクが高い分、リターンも高い。カネ余りを背景に投資家は金融機関から借り入れを増やしてまで投資を膨らましていた。サブプライムローンの焦げ付きが拡大してこうした金融商品の相場が下がると、投資家が一斉に資金を引き上げ、さらに相場が下がる。こうしたなか、一部のヘッジファンドや金融機関が経営危機に陥ったわけだ。
  サブプライムローンの市場自体は世界経済からみれば極めて小さいので、影響は限定的とみられていたが、どの程度証券化され、投資家がどの程度借入金を膨らませて投資していたか実態はよくわかっていない。こうした信用不安が、さらなる不安を呼び、市場は大混乱を起こしている。これに対して各国の中央銀行は合計数十兆円の緊急資金を市場に供給し、事態の沈静化をはかっているが、問題は長期化の様相を呈している。
2007.08.20
前のページにもどる
ページトップへ