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法人成りのメリット・デメリット
●  法人成りのタイミング
  個人で商売をされている経営者で、売上が毎年アップしており、税金を“そこそこ”支払うようになると、確定申告の打ち合わせで税理士が法人成りを持ちかけることがある。
  この税金を“そこそこ”とはどのぐらいを指すのかというと、金額よりも税率の方が判りやすいので税率を一つの目安と考えていただきたい。
  経営者の方ならご存知の通り、所得税は累進課税を採用しており、所得が上がれば税率も上がる仕組みとなっている。一方で法人税は地方税も含めて実効税率約41%となっている。つまり、所得税33%+住民税10%で大企業と税率ではほぼ互角となってしまうので、やはり税率は法人成りを検討する目安であろう。
●  法人成りのメリット
  個人では節税にも限界があるが、法人では節税対策をいろいろ実行することが可能だ。事実税理士などが、法人成りに関する節税本を多く出版している。
  そこで、法人成りによるメリットをいくつか列挙してみる。
  • 経営者が給料をとれる。給与所得控除は年収600万で29%、800万で25%、1,000万で22%ある。ただし、資本構成・役員構成及び所得基準によってはこの給与所得控除を法人の費用として認めてくれない場合があるので設立時注意されたい。
  • 経営者の家族へ給料が払える。個人でも専従者給与というものがあるが、事前に税務署にいくらとるか届けなければいけないうえ、専従者は年間103万円以下の給与でも扶養に入ることができない。
  • 損金経理要件を満たしている案件に限るが、保険料が必要経費となる。個人では、どれだけ加入していても生命保険料控除は5万円(ここでは個人年金5万円は除く)しか経費化できないことと比較すると節税効果は絶大だ。
  • 法人であれば、退職金を受け取ることができる。経営者はもちろん役員である家族に対しても退職金を支払うことができる。これも個人ではできない。
    その上、退職金に対する税金は現在のところ、優遇されている。
    また、死亡による退職金は相続税法上、500万円×法定相続人までは非課税という特典がある。
  • 家族間で家賃を支払うことができる。例えば、会社が社長の妻所有の土地建物を賃借し家賃を社長の妻に支払うケース。個人では生計同一間では、経費とは認められないことを考えると所得分散の手段としてもメリットは大である。
  • 資本金1,000万円以下で設立したなら、2事業年度は消費税が免税。
  • 青色申告なら、繰越欠損金は7年間繰越可能。個人では最長3年間しかない。
  • 法人化による社会的信用アップ。「ヤフーショッピング」では個人出展できないなど、インターネットを媒介とする事業において法人成りは必須となりつつある。
    (注)家族への給料や退職金の支給は、当然それに見合う勤務実態等が必要である。
●  法人成りのデメリット
  • 赤字でも法人住民税を支払わなければならない。都道府県で5万円、市町村で2万円の計7万円かかるところが多い。
  • 交際費が全額経費とはならない。資本金1億円以下の会社では、支払った交際費が400万円以下なら交際費×10%は経費とは認めてくれない。
  • 会社法が施行となり、従前に比べて会社を設立することが容易となった。しかし、役員変更、本店移転などで登記が必要となり個人では存在しなかった費用が生じる。
  • 税務申告書が複雑となり、かつ専門知識が必要となる。税理士サポートが必要となるケースがほとんどだ。
  • 社会保険が強制加入となるが、この社会保険料は実は大きな費用負担となる。
●  役員報酬の注意点
  平成18年の税制改正により、役員報酬は原則として期中増減不可能となった。ということは株主総会で一旦役員報酬を決定すると次の株主総会まで変更することができない。設立当初は資金繰りが最も苦しい時期となるので、事業計画をしっかり立て会社の規模として妥当な報酬を決める必要がある。
(今村 京子 社員税理士、マネーコンシェルジュ税理士法人)
2007.08.27
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