>  今週のトピックス >  No.1502
経産省、2008年度税制改正に向けて非上場株式等の相続税軽減を要望
●  非上場株式等に80%以上の軽減措置
  経済産業省は8月24日、「2008年度税制改正に関する経済産業省意見」を公表し、地域経済の活力維持や雇用確保を図る中小企業の活性化のため、(1)中小企業事業承継税制の拡充、(2)中小・ベンチャー創業支援(エンジェル税制の拡充)、(3)少額減価償却資産の特例の延長などを求めた。そのほか、IT投資・研究開発投資・人材投資の促進のための税制措置や減価償却制度の見直しなども盛り込んだ。
  中小企業事業承継税制の拡充では、一定の事業継続・雇用確保を要件として、非上場株式等の事業用資産の相続税の80%以上の軽減措置の導入や、事業承継税制の抜本改革に併せ、営業権を始めとする非上場株式の評価についても事情の変更等を踏まえた所要の見直しを行うことを要望。現行特例制度での事業承継時における自社株の軽減は10%に過ぎず、80%減額が実現すれば、相続税負担は大幅に減少する。
  中小企業の事業承継の円滑化は、雇用確保等の観点から重要な課題だが、依然として廃業率が開業率を上回るなかで、年間29万社の廃業のうち、後継者不在によるものが7万社、それに伴う雇用の喪失が毎年20万〜35万人にのぼると推定される。経産省では、事業承継円滑化のための総合的支援策の一環として、事業承継の際の障害である相続税負担の問題を解決するため、非上場株式等に係る事業承継税制の抜本的改革を図りたい考えだ。
●  エンジェル税制は投資時点でのインセンティブ措置
  中小・ベンチャー創業に投資する個人投資家を優遇するエンジェル税制については、投資時点での税額控除制度の創設を求めた。現行の投資時点での優遇措置は、他の株式譲渡益から投資額を控除する制度のため、株式市場が低迷した場合、他の株式譲渡益が生じないことからインセンティブが働かないとの考えだ。併せて、株式取得時点や損失発生時点の優遇措置の対象所得の範囲を金融所得に拡大することも要望している。
  資本金1億円以下の中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を即時償却できる少額減価償却資産の特例は、2008年3月末に適用期限を迎えることから、その延長(2年間)を求めた。「2006年中小企業実態基本調査」(中小企業庁)によると、調査企業約140万社のうち17万4,743社が同特例を利用しており、うち68%にあたる11万8,262社が資本金1,000万円以下の小規模企業だ。同特例は、小規模企業を中心にパソコンなどの生産性向上に寄与する投資の促進に効果があるとみられている。
●  法定耐用年数区分の見直し
  そのほか、今年度改正において抜本的見直しが行われた減価償却制度については、さらに法定耐用年数の見直しや短縮特例制度の簡素化などを求めている。
  日本の法定耐用年数区分は、アメリカの48区分(業種ごと)や韓国の26区分(業種ごと)、イギリスの1区分(償却率25%のみ)などに比べ、390区分(設備の種類ごと)と複雑になっている。こうしたことから、新技術や新製品が誕生するたびに区分けの問題や適用する耐用年数の問題が生じ得る。そこで経産省は、法定耐用年数区分の大括り化(おおくくりか)を要望している。
  また、現行の耐用年数短縮特例は、承認基準が、設備が陳腐化した場合など限定的であり、申請にもコストがかかることから、承認基準の合理化・手続きの簡素化などを求めている。
参考資料:経済産業省意見の概要は↓
http://www.meti.go.jp/topic/data/070824-2-2.pdf
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.09.03
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