>  今週のトピックス >  No.1508
各省庁から出揃った税制改正要望、来年度の方向性は?
●  税制改正にも影響する国会事情
  平成20年度税制改正に向けて、各省庁からの来年度税制改正要望が出揃った。先日の参議院選挙で与野党が逆転したことにより、今年の税制改正論議は難航することが予想されるため、ざっと見る限り各省庁からの要望にも、それほど目立つ大きな要望はあまり見当たらない。噂されていた消費税増税も、この状況では先送りとなる可能性が高く、来年度は「無難な税制改正」になりそうだ。
  例年通りでいけば、今後のスケジュールとしては、11月頃から税制調査会での議論が本格化し、12月中旬には「与党税制改正大綱」として発表される。
●  各省庁の要望1〜金融庁・・・証券優遇税制の延長の是非が焦点
  以前、No.1500で経済産業省の改正要望についてはお伝えした。今回はその他の各省庁の要望内容について、簡単にまとめて見ていきたいと思う。
  まずは金融庁。今回の税制改正論議の中心となるであろう証券優遇税制についての要望等が盛り込まれている。上場株式等の譲渡所得の優遇税率(現行10%)については平成20年12月31日まで、上場株式等の配当所得の優遇税率(現行10%)については平成21年3月31日までとなっているが、金融庁は前者については、「当分の間の継続」、後者については「恒久化」することを要望している。
  また、現状では同じ金融商品の損益でも、株式譲渡所得と配当所得の間では損益通算することができない。この点を改正し、金融商品間での損益通算の範囲拡大を要望している。
●  各省庁の要望2〜国土交通省・・・住宅関連税制の新設、拡充など
  国土交通省では、住宅関連の優遇税制の新設や拡充をメインに要望している。
  新設項目としては二つの要望が上がっている。一つは「住宅長寿命化促進税制」の創設で、耐久性、耐震性等を備えた一定の基準に適合する認定住宅について、その取得にかかる登録免許税、不動産取得税及び固定資産税を一定率または一定額減免するというものである。
  もう一つは、「省エネ改修促進税制」の創設で、既存住宅において窓の二重サッシ化や壁の断熱化などの省エネ改修を行った場合に、かかった費用の10%(上限20万円)を所得税から税額控除でき、固定資産税も3年間は1/2に減額するという内容だ。
  他にも、平成18年度税制改正により新設された「耐震改修促進税制」の拡充や、新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置の延長、住宅取得等資金に係る相続時精算課税の特例の延長などが盛り込まれている。
●  各省庁の要望3〜厚生労働省・・・現行優遇税制の延長がメイン
  最後は厚生労働省。新設項目としては、障害者の就労支援を行う事業所等に発注した費用の増加額の一定割合等について税額控除する「発注等促進税制」などが要望されている。その他は、たばこ税の引き上げや試験研究費の税額控除制度、人材投資促進税制、情報基盤強化税制などの延長や拡充となっている。
  尚、これらの要望が実際の税制改正に反映されるかどうかは全くの未知数であり、今後の動向を引き続き注視していきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2007.09.18
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