> 今週のトピックス > No.1516 |
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政府税調、所得税の「給付付き税額控除」導入を検討 |
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![]() ● 消費税増税に代わる論点となるか
政府税制調査会は、9月18日の会合から個人所得課税の見直しのための議論を始めているようだ。当初の予想では、この秋から消費税増税に向けての議論が本格化していくだろう、と見られていたが、先の参議院選挙、首相辞任などの政局の激変により、来年の税制改正の主要論点とすることが困難な情勢となってきた。
そのような状況の中、政府税制調査会の香西会長は18日会合後の記者会見で、所得税に「給付付き税額控除」の導入を検討する考えを表明している。所得格差の広がりを是正し、低所得者に配慮した、社会保障制度も組み合わせた所得税制を議論していきたい、ということのようだ。 ![]() ● 現状の所得控除の問題点
この「給付付き税額控除」の内容を説明する前に、まず現在の所得税における控除制度の確認をしておきたい。
所得税における控除には、課税所得を減額する所得控除と、税額を直接控除する税額控除がある。税額控除では、「配当控除」、「住宅ローン控除」など他にもいくつかの税額控除制度があるが、あまり一般的に適用できるものではないため、メインはやはり所得控除になる。 所得控除には、基礎控除や扶養控除、配偶者控除などの控除項目があり、多くの方がこの控除を受けているが、実はこの所得控除は、低所得者層ではあまり恩恵が受けられない場合がある。 というのも、この所得控除は所得から一定額を控除する仕組みとなっているため、所得が少なく、そもそも所得控除以下の所得しかなければ、余った所得控除は切り捨てとなってしまい、その部分の税額軽減のメリットは受けられない。 一方、ある程度の高所得者になれば、所得控除は全額受けることができ、その分の所得税軽減という恩恵をめいっぱい受けることができる。 ![]() ● 欧米では導入済み
そこで登場するのがこの「給付付き税額控除」である。仕組みはこのようになっている。
例えば、「給付付き税額控除」の限度額が15万円あるとする。所得税が15万円以上であれば、15万円の税額控除が受けられるため、納税すべき所得税は15万円少なくなる。所得税が10万円しかない場合には、これまでの控除制度の考え方でいけば、10万円を控除し、残りの5万円は切捨てとなるところだが、この「給付付き税額控除」では、残りの5万円部分は現金で支給される。極端な場合、所得が全くなく、所得税が0の場合でも、15万円の現金支給が受けられることになる。 この「給付付き税額控除」という制度は、現在の日本の税制では採用されていないため、あまりなじみがないが、欧米では就労支援、子育て支援のため、既に導入されている。ただアメリカでは、この「給付付き税額控除」にかかる不正受給者が全体の3割に上るとも言われており、問題が出ているのも確かだ。単に税制だけの問題ではなく、給付金という社会保障制度も絡んでくるだけに、実際に導入するためには様々な障害がありそうだ。 ![]() (村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
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2007.10.01 |
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