>  今週のトピックス >  No.1521
人事部門最大の課題は「全社的なモチベーションの向上」
●  人事部門に求められる役割と課題
  株式会社 産労総合研究所が発表した企業の人事部長を対象にした「人事部門の現状と今後の役割に関する調査」の結果によると、人事部門として強化すべき方向について、実に全体の7割の人が「全社的なモチベーションを高める」ことと回答していることが分かった。同研究所では、全社的なモチベーションの向上が「成果主義で疲弊感のある職場での現下の最大の人事課題」と指摘している。
  この調査は、産労総合研究所が上場企業および未上場企業のうちから任意に抽出した約3,500社の人事部長を対象に「人事部門の現状と今後の役割に関する調査」として実施したものである。主な調査項目として、(1)各社における組織改革、経営改革に実施状況、(2)成果主義人事の導入状況とその効果、(3)女性社員、高齢者、非正規社員の活用状況、(4)人事部門の役割と課題、グロ−バル化への対応、(5)人事スタッフのキャリアと育成、などを取り上げており、今後の人事部門に求められる役割と課題について、とても参考になる調査結果となっている。
●  成果主義人事制度導入の効果
  調査結果を見てみると、「人事制度改革」における成果主義人事制度の導入では、約8割(81.9%=「導入した」76.7%+「予定である」5.2%)の企業が進めていることが分かる。また、「組織改革」、「経営改革」においても、「実施した」あるいは「実施予定である」回答をあわせて約7割の企業で進めている。
  このように、企業における各種企業改革の予定も含めた実施状況割合はかなり高く、バブル経済崩壊の長く険しい苦難の時代を経て、各企業では競って諸改革を進めてきたことを表していると言えるだろう。
  次に、成果主義人事制度の導入の効果を「組織風土の変革」、「人件費へのインパクト」、「社員の能力育成」、「適材適所への配置・任用」の4項目で聞いてみたところ、最も効果が高かったのは「組織風土の変革」で、約9割の企業が何らかの効果があったとしている。
  事実、社員意識や組織風土に及ぼした影響を見てみると、成果主義人事制度を「導入した企業」と「導入していない」企業を比較すると、「チームワーク」や「モチベーション」の全てにわたって、成果主義人事制度を導入している企業の方が向上傾向となっている。
  こうしてみると、成果主義人事制度については好意的な評価となっているようだが、一方で、導入後に大きな見直しを行った、あるいは、行なう予定である企業も約6割に達している。とくに、1,000人以上の大企業では、「大きな見直しを行った」企業が約4割(44.0%)もあり、好意的な評価ばかりではなかったようである。
●  今こそモチベーションの向上に取り組むチャンス
  成果主義導入前後には、経営合理化などが相次ぎ、従業員のモチベーションも上がらず、「現場機能が低下」していた。今後、人事部門には、次世代を担う社員の育成、女性社員や高齢者の活用など多くの課題があるが、特に、従業員のモチベーションの向上は、企業の活力を生み出す重要な要素であり、優先的に取り組むべき課題である。
  わが国の経済が引き続き好調傾向を維持している今こそ、モチベーションの向上に取り組むチャンスであろう。
出所:株式会社 産労総合研究所 「人事部門の現状と今後の役割に関する調査」
(http://www.e-sanro.net/cgi-bin/dlrank/dlranklog.cgi?dl=release070920)
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.10.09
前のページにもどる
ページトップへ