> 今週のトピックス > No.1523 |
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サービス残業の是正指導 |
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![]() ● サービス残業是正企業数は年々増加
厚生労働省は、2006年度において労働基準監督署が賃金不払い残業(以下「サービス残業」※1)の是正指導を行った事案の状況をまとめた。
それによると是正企業数は1,679(2005年度では1,524、2004年度では1,437)で、対象となる労働者は182,561人(2005年度167,958人、2004年度169,111人)。支払われた割増賃金の合計は227億円(2005年度232億円、2004年度226億円)に上った。これは1企業当たり1,353万円(2005年度1,529万円、2004年度1,574万円)、労働者1人当たり12.0万円(2005年度13.8万円、2004年度13.4万円)の計算となる。 ちなみにそれ以前の状況をみると、1企業当たりの割増賃金は2001年度で1,328万円、2002年度1,796万円、2003年度2,016万円だった。是正企業数は2001年度613件、2002年度403件、2003年度1,184件である。 以上をまとめると、是正企業数や1企業当たりの割増賃金など2003年度から急増したことが分かる。ひと頃に比べサービス残業という言葉は聞かれなくなったものの、実態はあまり変わっていないのではないか。厚生労働省は長時間労働が過労死や心の病の原因と見ており、その原因であるサービス残業への指導が厳しくなっている。 ![]() ● 厚生労働省の対応強化策
対応の取りかかりとして厚生労働省は2001年、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を策定し、各都道府県労働局に通知した。
主な内容は次のようなものである。 ![]()
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こうした基準を徹底するために毎年事業所の指導を行っているわけだが、それでも違反事業所は年々増加してきた。2000年度の違反事業所数は監督実施事業場数の29.0%、2002年度で同32.9%、2003年度は同37.8%にも達した。
これを受けて2003年、新たに「賃金不払残業総合対策要綱」と「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」が策定された。 「要項」のポイントは以下の通りである。 ![]()
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一方、「指針」では次のような具体的な方策も盛り込まれた。
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![]() ● サービス残業はコンプラ違反
厚生労働省は残業自体を否定しているのではなく、残業時間の把握と賃金の適正な支払いを求めるという現実的な指導を行っている。是正指導が入ると今後の企業活動にも支障が出ることも懸念されるため、サービス残業の実態がある企業は、早急な対策の立案が求められる。
昨今、企業には法令遵守が強く求められている。コンプライアンスのできない企業は存続を許されない状況である。サービス残業を強いるのは当然、コンプラ違反である。企業はコンプラの視点からもサービス残業の是正が求められる。 ![]()
※1
所定労働時間外に労働時間の一部または全部に対して所定の賃金または割増賃金を払うことなく労働を行わせること。
※2
法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる場合、または法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要。これが労働基準法第36条に規定されていることから、この協定のことを通称「36協定」という。
![]() 出所:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成18年度)」
![]() (可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー) |
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2007.10.15 |
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