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第34回国際福祉機器展を見る
〜市場縮小傾向が見える中で新たな動きも〜
●  出展企業減る
  第34回国際福祉機器展が10月3〜5日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。単に国内最大の福祉機器の展示会であるにとどまらず、混沌とした日本の福祉状況を展望する意味でも注目度の高いイベントと言える。
  残念ながら、今回最も大きなトピックと言えるのは、ここ数年600以上あった出展企業が582社まで減ったという点だろう。私自身は最終日に足を運んだが、例年のラストデーに比べて明らかに人出も少ない。
  出展数が減少した背景としては、やはり介護保険における福祉機器レンタルに大きな規制がかけられた点があげられよう。介護報酬自体が絞り込まれることで、事業者や施設における新しい機器類の購入余力が低下している点も無関係ではないだろう。昨年、一昨年と盛況の源泉であった介護予防機器についても、やや熱が冷めた感が強い。
●  「守り」に重点を置いた展示内容
  そうした中で、高齢者や障害者の事故を防止する、あるいは災害や犯罪などから高齢者などを守るというリスクマネジメントに力を入れたものが目立っていた印象がある。
  例えば、ナースコール設備がなくても使用できる離床センサー(夜間の転倒・転落リスクがある人の離床を感知するセンサー)、あるいはインターネット接続によって遠隔から利用者を見守ることのできる装置。これらは、インフラの整った大規模施設以外でも、簡易に付設が可能という点が注目される。
  つまり、小規模なデイサービスやグループホーム、あるいは在宅環境などにおいてもリスクマネジメントの重要性が認知されていることを示し、それは同時に重篤な利用者が施設から地域密着型サービスや在宅サービスなどに移行しつつあることも意味している。
  一方で、給付管理用パソコンソフトや人事労務管理システムなどの種類も例年になく増えており、コムスン事件によって事業所側のコンプライアンス強化に対するニーズが高まっている様子もうかがえる。これも広い意味でのリスクマネジメントととらえれば、今回の機器展が「守り」という部分に重点をおいた色合いが濃いことが分かる。
●  地方企業の積極的取り組み
  もう一つ興味深いのは、全体として出展企業数が少なくなっている中、地方の企業が頑張っているという傾向だ。中には、地場産業振興センターや産業振興財団(地域企業の連合体が産業振興を目的として立ち上げた法人)といった主体もいくつか見られた。
  経済の地域格差が広がりつつある中、地方に根付いている地場産業が「福祉機器」への参入によって経済の自力再生を狙おうとしているのであろうか。例えば、冬の寒さが厳しい東北地方において、地元の気候を熟知した企業が「冬場でも手すりなどが冷たくならない素材」を展示するなど、地域ならではの知恵を活かしたものを見ることができた。
  考えてみれば、地方における高齢化率は都市部とは比べ物にならないほど深刻であり、福祉ニーズへの対応力はむしろ地方ほど鍛えられる環境にある。これもまた、今の日本の福祉状況を表していると言えるだろう。
  ややネガティブな総評になってしまったが、逆に考えれば、介護保険のスタートより始まっていたややバブル的な福祉業界のあり方が、ここへ来て地に足のついたものになってきたとも言える。一概に悲観する話ではない。
(田中 元 医療・福祉ジャーナリスト)
2007.10.15
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