>  今週のトピックス >  No.1527
金融機関の住宅ローン推進の現状
●  ローン利用者の8割は変動金利
  地価の先高観を背景に、住宅取得が活発化している。このたび、(独)住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫)が、金融機関を対象に住宅ローンの貸出動向を調査し、その結果を公表した。調査時点は2007年8月である。
  まず住宅ローン金利の固定・変動の種別においては、全期間固定金利や10年超の固定金利を選択する利用者はわずか13.7%に過ぎず、大部分は変動金利や10年以下の固定金利を選択している。
  以前同機構が行った「住宅ローンに関する顧客アンケート」では、全期間固定金利を望む利用者が71.3%と大部分を占めていた。利用者は、住宅取得前は金利変動リスクのない固定金利を望むが、実際の住宅取得時には変動金利を選択していることが分かる。実際の物件を前にすると、変動金利で目先の返済負担を軽減し、より高価な住宅を取得していることがうかがえる。あこがれの物件を見ると、金利変動リスクへの警戒感も薄らぐのだろう。
●  家計との取引強化
  金融機関も住宅ローンを積極的に販売しているが、その目的について回答を求めると、「貸出残高の増強」が45.3%、「家計との取引強化」が40.6%と続く。その要因としては「企業貸出の伸び悩み」と個人向けは「貸し倒れが少ない」ということが挙げられている。
  金融機関が住宅ローンの顧客として重視する層は、所得が比較的高い中所得層(年収800万円程度)であり、年代では30代または40代である。住宅の種類では新築戸建てである。新築分譲マンションや新築分譲戸建てでは、販売業者と金融機関が提携しており、新たにローンの貸し手として食い込めないからであろうか。
  こうして競争が激化する住宅ローン市場であるが、他の金融機関との差別化の手段としては、「金利優遇」が65.0%、「審査の迅速さ」が58.3%、「金利水準の低さ」が46.5%と続く。そのほかには、「保証料・手数料の安さ」が29.9%、「高い融資割合」が28.7%、「保険等による付加価値の充実」が28.4%などとなっている(複数回答)。利用者の負担を軽くする手段が主流である。
●  金融機関は固定金利ローンを志向
  金利水準を決定する際の指標としては、「調達コスト」を指標とするという回答は変動金利で56.3%、固定金利で56.7%であるが、最も多い回答は「競合金融機関の金利」であり、変動金利で73.4%、固定金利で75.1%となっている。こうした金利競争は利鞘の縮小、他の金融機関への借換といったリスクを内在している。
  このため、金融機関として今後推進したい戦略としては、「全期間固定や長期固定ローン」が41.7%、「中期固定金利ローン」が27.6%、「短期固定ローン」が14.1%、「変動金利ローン」が7.5%と、利鞘が安定的に確保できる固定金利が志向されている。
出所:(独)住宅金融支援機構「平成19年度民間住宅ローンの貸出動向アンケート」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.10.22
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