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知っていますか?「パワーハラスメント」
●  パワーハラスメントの定義
  1986年に男女雇用機会均等法が施行されて、早いもので20年以上が経過し、会社でのセミナーやメディアの影響などもあって「セクハラ」の概要については、知っている方も増えており、一般的な言葉としてかなり浸透しつつある。それに対して「パワー・ハラスメント」はどうだろうか? きちんと説明できる人はまだまだ少ないかもしれないので、はじめに確認しておくこととする。
  「パワー・ハラスメント」とは、権力や地位を利用した嫌がらせのことをあらわす言葉である。岡田康子氏の著書では、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」と定義している。「パワー・ハラスメント」は、略して「パワハラ」といわれるが、これは岡田康子氏が本の中で生み出した和製英語である。2002年ごろから「パワハラ」という言葉が広まりつつあったが、法的な整備が進んでいないこともあり、まだまだ認知度は低い。水面下ではパワハラを訴える社員も多く、企業側にとっては訴訟などに発展する可能性もあるので、いち早く対策を講じなければいけない。
●  パワハラをする側とパワハラを受ける側の意識の違い
  パワハラについては、いろいろ種類があるが、リストラなどのために解雇を目的とする嫌がらせが圧倒的に多いように感じられる。近年大手企業の中には、リストラをして業績回復をしたところもあるが、そのリストラを早く進めるために会社側から圧力をかけて自己都合で退職してもらうために、パワハラを行っていたケースも見受けられた。例えば暴言を吐いたり、人格を否定するような発言を繰り返したり、または大声で怒鳴ったり、机をたたいたりと、関係している社内の人から見ていても、やりすぎではないかと言われるようなことを当時は平気でやっていたようだ。
  またパワハラをする上司も同様にそのボスにパワハラを受けていたりする。よく聞く例としては、かなりのストレスを抱えていると無意識のうちにその解消目的でパワハラをしてしまうこともあるようだ。またパワハラを受けている側も、自分のことを責めてしまったり、努力不足などを認めてしまい、パワハラを受けているという自覚がない人も結構多く、これも大きな問題の一つである。
●  パワハラ上司になる可能性はどのくらい?
  「パワハラ」といってもまだ漠然としている方もいるかと思うので、ここで「パワハラ」になりそうな行動や発言をあげておきたいと思う。
  • 仕事を与えない
  • 周囲の状況を気にしないで部下を怒る
  • 飲み会への参加を強要する
  • 解雇をほのめかすような発言をする
  • 部下を立たせたままでよく説教をする
  • 部下の人間性を否定する
  これらは、通常であれば、パワハラと判断される。いずれにしてもセクハラと同じで「ハラスメント」は受ける側がどのように感じたかが重要である。パワハラ加害者が「悪気はまったくなかった」としてもあくまで主体は、受け手であり、そのパワハラ行為が大きな事件になってしまう可能性もあることを忘れてはならない。
  先日、パワハラによる従業員の自殺に対して、東京地裁で労災認定を認める判決を出したが、裁判長は、上司のパワハラを「男性の人格、キャリアを否定する内容で過度に厳しい」と指摘した上で「男性の心理的負荷は、通常の上司とのトラブルから想定されるものよりも重い」と判断し、「男性は仕事のために鬱病になり自殺した」と結論付けている。
  パワハラについては各企業もまだまだ問題意識が低いので、今回の労災認定の判決のニュースがいい意味で影響を与えてくれることをのぞんでいる。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.10.22
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