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ふるさと納税、住民税の1割上限に税額控除方式で
●  寄附する「ふるさと」は納税者が自由に選択
  納税者の選択で自分の住む地域以外の地方自治体に個人住民税の一部を寄附できる「ふるさと納税」構想の枠組が明らかになった。
  総務省のふるさと納税研究会は、地方自治体への寄附金に対して、個人住民税の1割を上限に5,000円を超える寄附金相当額を個人住民税から税額控除する新制度を提案する報告書を公表した。政府はこの報告書をたたき台にして具体的な制度設計を検討し、2008年度税制改正での実現を目指す。
  同報告書によると、「ふるさと納税」制度における「ふるさと」となる地方自治体は、納税者の意思を尊重して納税者が選択するところを「ふるさと」と認め、都道府県と市区町村の双方を対象とする。また、現行の寄附税制では、地方自治体に対する寄附金は所得控除の対象とされているが、税額控除方式の方が納税者には分かりやすく、貢献意欲も湧くとして、適用下限額を超える額の全額を控除する方式を提案している。
●  適用下限額は現行の10万円から5,000円に大幅引下げ
  ただし、控除適用額については、個人住民税における納税者間の公平性の確保の観点から、個人住民税所得割の税額の1割の上限を設けるとともに、事務が過度に煩雑になることを避け、比較的少額の寄附を行う納税者に配慮し、適用下限額を現行の10万円から大幅に引き下げて5,000円とする。
  ちなみに、2005年分所得税に係る寄附金控除の適用者数が15万6,346人、控除額が約269億円であるのに対し、2006年度分個人住民税に係る寄附金控除の適用者数は6,196人、控除額は約38億円にとどまっており、その理由として、10万円という個人住民税の寄附金控除の適用下限額の高さが指摘されている。
  これでは相当額の寄附をしない限り所得控除の適用を受けられないことから、なるべく多くの人が「ふるさと納税」ができるように適用下限を大幅に引き下げて5,000円としたものだ。
  なお、上限を超える部分についても、これまでと同程度の税額軽減措置を講ずることが望ましいとしている。
●  個人住民税における簡素な申告手続きを検討
  また、納税者にとって「使いやすい」仕組みとするため、寄附申請と税額控除を受けるまでの納税者の手続きをできるだけ簡素化する。現行制度上、地方団体に対する寄附金について所得控除を受けるためには確定申告が必要だが、確定申告を行ったことがない給与所得者にとっては、新たに確定申告のために書類作成を行うなどの負担は小さくない。
  このため、「ふるさと納税」制度を導入するに当たっては、所得税が課税されず個人住民税のみが課税されるような納税者や、個人住民税の税額控除の適用のみ受ければよく、所得税の所得控除の適用を望まないような納税者のために、個人住民税における簡素な申告手続きについて検討することを求めている。
  具体的には、個人住民税に係る寄附金控除制度に特化した申告の仕組みを設けることについて検討し、併せて、寄附を受けた地方自治体が発行する領収書を個人住民税における寄附金控除の適用を受けるための申告書に活用するなど、申告様式の簡素化について検討することを提案している。
参照:「ふるさと納税研究会報告書」↓
http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/furusato_tax/pdf/houkokusyo.pdf
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.10.22
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