>  今週のトピックス >  No.1532
来年度税制改正の争点は証券優遇税制か
●  異例の税制改正論議
  来年度の税制改正に向けての論議が徐々に本格化し始めてきた。具体的項目も少しずつ挙がり出しているのだが、今回の税制改正論議は、例年になく異例の展開になりそうである。
  というのも、衆議院では自民党、参議院では民主党がそれぞれ過半数を握っているため、調整は一筋縄ではいかない。例年であれば、12月中旬に与党である自民党から税制改正大綱が発表され、それがほぼそのまま国会で可決され、施行されるという流れなのだが、今年は民主党も税制改正大綱を独自に発表する見込みだ。両者の擦り合わせがどうなるのか、全く分らない状況である。
●  証券優遇税制における三つ巴
  そんな中、来年度税制改正の目玉となるであろう証券優遇税制について、早くも意見の不一致が表面化し出している。
  証券優遇税制は、上場株式等について譲渡益は来年末まで、配当金は再来年の3月まで、それぞれ税率を10%に半減させる優遇措置である。証券優遇税制は、平成19年度税制改正において打ち切られるはずだったが、自民党の意向で1年間の延長となった。
  その1年間の延長の末、廃止するのかそれともさらに継続するのかが来年度税制改正に委ねられている。
  政府税制調査会は10月16日の会合で、証券優遇税制を廃止する方向でまとまったようだ。一方、与党自民党内には証券優遇税制の延長を望む声もあり、政府税制調査会とは意見が一致しない。それに加えて、参議院を握る民主党は証券優遇税制廃止の立場を取っており、いったいどうなるのか全く予想がつかない。
  政府税制調査会は、将来的には金融商品から生じる損益を一体化させて課税する「金融所得一体課税」への移行も視野に入れているが、このままでは導入までには相当な困難が予想される。
●  事業承継税制の見直しでは方針一致か
  一方、政府税制調査会、自民党、民主党の三者間で比較的方向性が一致していると思われるのが、事業承継税制拡大についてである。三者とも中小企業の事業承継における負担減を目指す、という点では現在のところ、相違がないように見える。
  現実的に改正の対象となりそうなのは、非上場同族株式を相続する際の評価減の特例で、現在の10%減を条件付きで80%減に改正する案が自民党内で出ている模様だ。条件としては、5〜7年間の事業継続、従業員数の80%以上の雇用継続、税務署への事業計画の提出(原則毎年)などの義務付けが考えられているようだ。
  平成19年度税制改正で、「特定同族会社株式等に係る相続時精算課税の特例」が新たに創設され、相続時精算課税を選択した際に一定の要件を満たせば、最大3,000万円まで非上場同族株式等の贈与をいったん無税で実行できることになった。ただし、相続時精算課税(相続財産に足し戻し)であるため、直接的な減税とはなりにくく、それに加えて小規模宅地等の特例や特定事業用資産の特例との併用ができないため、実務家には評判が悪い。そのため、非上場同族株式にも小規模宅地等と同様の80%の評価減特例の創設が期待されるが、実現は依然不透明である。今後の動きをじっくり見守っていきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2007.10.29
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