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法人の黒字申告割合は32.4%で4年連続の上昇
〜2006事務年度における法人税課税事績〜
●  法人数、申告件数ともに過去最高
  今年6月までの1年間(2006事務年度)に申告期限がきた法人の黒字申告割合が前年度に比べ0.5ポイント増の32.4%と、4年連続で上昇したことが明らかになった。景気の持続的な回復に伴う企業業績の向上が反映したことはいうまでもないが、まだ30%台の低い数字であり、過去最高だった1973年度(65.4%)の半分にも満たない。これは、国税庁が10月29日に公表した2006事務年度の法人税課税事績でわかったもの。
  同課税事績によると、本年6月末現在の法人数は前年度に比べ2万8千法人(0.9%)増の300万5千法人で、うち2006年度中に申告したのは278万7千法人(前年度比0.7%増)だった。法人数、申告件数ともに過去最高。このうち黒字申告した法人の割合が32.4%だったわけだが、景気回復は大企業が先行しており、7割弱の大部分の中小企業にとってはまだまだ苦しい経営環境だったということになろう。
●  申告所得金額は57兆円で、16年ぶりに過去最高
  黒字法人の申告所得金額は、前年度に比べ13.3%(6兆6853億円)増と大幅に伸び、57兆828億円で、バブル期の1990事務年度の約53兆円を上回り、16年ぶりに過去最高の数字を更新した。黒字申告1件あたりでは6254万円で同10.5%の増加となり、こちらも過去最高の数字。一方、申告欠損金額は16兆4949億円で同27.4%(6兆2205億円)減、赤字申告1件あたり862万円で同27.2%減とともに大幅に減少した。
  申告欠損金額はピークの2002年度(33兆116億円)以降4年連続で減少しているが、資本金1億円以上の大法人に限れば申告欠損金額は前年度に比べ46.4%にあたる5兆2872億円減少している。つまり、申告欠損金額の減少はほとんどが大企業にかかるもので、多くの中小企業は景気回復が波及していなかったことがうかがえる。なお、申告税額は14兆4578億円で前年度に比べ14.8%(1兆8609億円)増となっている。
●  法人税調査では1兆7242億円の申告漏れ把握
  一方、2006事務年度における法人税調査をみると、不正計算が想定されるなど調査必要度の高い14万7千法人(前年度比2.4%増)を実地調査した結果、うち73.4%にあたる10万8千件(同4.1%増)から前年度に比べ3.6%増の総額1兆7247億円の申告漏れを見つけた。加算税額633億円を含む4402億円(同11.4%増)を追徴。1件あたりの申告漏れは1176万円となる。
  また、調査した21.7%にあたる3万2千件(前年度比10.5%増)が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正を行っており、その不正脱漏所得は4346億円(同4.9%増)だった。1件あたりの不正脱漏所得は1368万円(同5.1%減)と減少したが、過去最高だった2002年度の1591万円に比べれば200万円程度の減少にすぎず、不正事案の大口化は依然として続いているとみていい。
●  不正発見割合では「バー・クラブ」が5年連続ワースト1位
  不正を業種別(調査件数350件以上)にみると、不正発見割合の高い10業種では、「バー・クラブ」が52.0%で5年連続のワースト1位となった。「バー・クラブ」は2000年度まで14年連続1位という不名誉な記録を続けていたワースト業種の常連(唯一2001年度がワースト2位)。次いでこれも常連の「パチンコ」(49.1%)が続き、「廃棄物処理」(35.3%)までのワースト3の順位は4年連続で変わりない。
  一方、1件あたりの不正脱漏所得金額が大きい10業種では、前年6位の「貿易」が7921万円でトップになった。以下、「電子機器製造」(3926万円)、「パチンコ」(3447万円)、「物品賃貸」(2449万円)、「鉄鋼卸売」(2278万円)までがワースト上位5業種。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は高額10業種に入っておらず、1件あたりの不正脱漏所得金額は1167万円と相対的に少ない。
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.11.05
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