>  今週のトピックス >  No.1542
米利下げの影響は?ドル安と原油・金の高騰招く
●  2カ月で0.75%の利下げ
  米国の利下げが世界経済に波紋を広げている。利下げとは米国の日銀にあたる連邦準備理事会(FRB)が、短期金利の指標であるフェデラル・ファンド(FF)金利を引き下げること。つまり、蛇口をひねって世界中にお金を供給するようなものだ。住宅ローン問題に端を発した金融不安を解消するための緊急措置といえるが、ドルの大量供給はドル安を招く上、余ったお金が原油などの商品市場に向かい、原油や金は歴史的高値を付けている。その結果近い将来、インフレやバブルを招く恐れも出てきている。
  FRBは10月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25%の追加利下げに踏み切り、年4.5%とした。9月18日の0.5%に続く2回連続の利下げだ。FRBはこれをもって蛇口をあける金融緩和政策に区切りをつけるつもりだが、金融市場の混乱収束には時間がかかるとの見方もあり、年内に追加利下げをする可能性は捨てきれない。
●  教科書的には正しい
  サブプライムローン問題から火の手が上がった今回の金融不安。金融機関は金融不安が起きると経済の血液ともいうべき現金を抱え込む習性があるため、世界経済が滞り、機能不全を起こすこともありえた。そこで、蛇口をあけて血液を送り込むというFRBの措置は教科書的には間違っていない。ただ、一度に0.75%も引き下げたため、副作用が起きていることも確かだ。
  その端的な例が原油と金の高騰だ。原油はとうとう1バレル90ドル台に突入した。日本のガソリンは高いところで1リットル160円まで上がったようだ。金価格は1オンス800ドル台と28年ぶりの大台に乗せた。
  なぜ商品の市況が異常な水準に跳ね上がったかというと、利下げで大量供給されたお金の行き場がほかになかったからだ。株式は景気の先行きに不安があるため買いにくいし、債券は金融不安からすでに買われ過ぎの水準(で買いにくい)。株や債券の巨大マーケットで吸収しきれない資金が、商品市況に向かっているのだ。さまざまな商品の元となる油の高騰が、物価上昇(インフレ)を招く可能性が高まっている。
●  バブル招く恐れも
  金利が低い状態が続くとバブルが発生するリスクもある。1987年のブラックマンデー後に日銀が低金利政策を継続したことが、その後の不動産バブルを招いたし、1997年のアジア通貨危機後のFRBの利下げが、その後のITバブルを招いたといわれる。FRBは今後金融不安とインフレ・バブルの不安という2つのジレンマを抱えたまま、金融政策の舵取りをしなければならない。
2007.11.12
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