>  今週のトピックス >  No.1551
障害者雇用の現状
●  就職者数は前年比約2%増
  厚生労働省は、毎年6月1日時点での障害者雇用の現状を調査しており、今般その調査結果が公表された。
  障害者雇用促進法では、56名以上の企業に対して法定雇用率1.8%を義務付けている。
  1名÷1.8%=55.6名となることから、56名以上の民間企業に対して企業規模に応じた雇用が義務付けられている。ちなみに自治体や特殊法人に義務付けられた法定雇用率は2.1%である。また重度の障害者を雇用している場合は2名カウントされる仕組みである。原則として短時間労働者はカウントされない。
  調査結果によると、2007年6月時点で民間企業に雇用されている障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)は30.2万人であり、前年比1.9万人(6.7%)増となっている。
  法定雇用率の分母となる民間企業の労働者数は1,950.4万人であるから、障害者の雇用率は1.55%となる。全体でみると法定雇用率には達しないが、個別企業で見ると、71,224社中、31,230社が法定雇用率を達成しており、43.8%の企業が達成していることになる。
  全体の雇用率である1.55%は、前年の1.52%より改善している。また達成企業の割合も前年の43.4%より改善している。
  改善した理由については、景気の回復によるものとする見方があるが、2006年の障害者雇用促進法の改正施行と障害者自立支援法の施行が後押ししているといえよう。
●  障害者雇用への取り組みに温度差
  このように全体的には障害者雇用は上向きであるが、詳細に見ていくと課題も多い。
  まず企業規模別では、1,000名以上の企業では雇用率は1.74%と高く、500名以上では1.57%、300名以上では1.49%、100名以上では1.30%と、規模が小さくなるにつれて、雇用率が低下する。
  産業別に見ると、全体の雇用率1.55%を上回っているのは、農林漁業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸業、医療・福祉であり、それ以外の業種は平均を下回っており、産業ごとの格差が目立つ。
  また障害者を一人も雇用していない企業は、法定雇用率未達企業の63.4%と過半を占めている。つまり企業によって、障害者雇用への取り組みに温度差が見られるということである。
●  厚生労働省の指導強化
  こういった状況をふまえ、厚生労働省は、指導を強化することとなった。これまでは雇用状況の報告を受けて、ハローワークが雇い入れ計画の作成を命令し、計画の実施状況が悪い企業には実施の勧告を行い、さらに特別指導を行い、それでも実施しない企業は実名を公表してきた。
  今後は雇い入れ計画の作成を命令する対象企業を拡大することとした。具体的には法定雇用率を大きく下回っている企業や雇用人数の絶対数が少ない企業を重点的に指導することとし、雇用率の改善を進めたい考えだ。
出所:厚生労働省「平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.12.03
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