>  今週のトピックス >  No.1553
60歳以上の雇用条件、希望と現実のギャップ大きい
●  7割以上の従業員が継続雇用を希望
  独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「60歳以降の継続雇用と職業生活に関する調査」によると、現在勤めている会社の定年が60歳で、継続雇用制度が設けられているという回答者のうち、約4分の3は定年後も収入のある仕事を続けたいと考えており、約6割は自社での継続雇用を希望していることが分かった。
  この調査は、昨年10月に、高年齢者雇用安定法の改正による雇用確保措置の義務化をきっかけに実施した高年齢者の継続雇用に関する企業アンケート調査に引き続くものとして、今回は従業員を対象として実施された。
  60歳以降の継続雇用については、高年齢者雇用安定法の改正ということだけではなく、労働力人口の減少や人材不足、技能継承等の問題からも再雇用制度や勤続延長制度の導入などにより企業が積極的に取り組んでいる事柄である。今回の調査では、回答者の半数近くは、継続雇用時に現在の年収の8割以上を希望しているが、それが実現すると見ている回答者は約2割にとどまっているなど、継続雇用に対する労働者の希望、期待と実際の継続雇用制度のあり方の違いが浮き彫りとなっている。
●  従業員への継続雇用制度の説明不足がギャップの原因の1つ
  調査結果を見てみると、継続雇用時の最も希望する就業形態としては、6割弱の回答者が「正社員」を挙げている。しかし、企業が導入している継続雇用制度は、「嘱託・契約社員」という就業形態が多く、今回の調査でも最も実現の可能性が高い就業形態としては、「嘱託・契約社員」を挙げる回答者が約7割に及び、希望と現実には大きな隔たりがあることがうかがえる。また、賃金についても、4割近くの回答者は、継続雇用時の賃金として現在の賃金の8割以上を最低限希望しているが、実際に8割以上を支給するような継続雇用の制度は少ない。
  こうしたギャップが起こる背景の1つには、国から従業員に支給される在職老齢年金や高年齢雇用継続給付といった公的給付の関係があるものと思われる。公的給付は60歳以降の賃金に応じて調整されるため、企業は、賃金とこれら公的給付とのバランスを考えて継続雇用の制度を導入しているケースが多い。企業側としては、従業員が公的給付の恩恵を受けられるようにしているのだが、従業員からすれば会社からもらえる賃金が減少したと感じる。こうした制度の仕組みを対象者にきちんと説明できていればいいのだが、今回の調査でも継続雇用時の労働条件や就業形態、企業年金・公的給付などの受給見通しについて会社から説明を受けたという質問では、59歳正社員でも「就業形態」、「雇用契約期間」についてすでに説明を受けたと回答した者は半数を下回っており、「給与・賞与」、「勤務場所」などについては、3分の1程度にすぎない結果となっている。
●  一歩進んだ継続雇用制度の検討
  今回の調査で、継続雇用制度や高年齢従業員向けの人事管理の取組みに関し、回答者の大半が継続雇用時の賃金水準向上、技能・技術を生かした配置、希望者全員の継続雇用を要望している結果が出ている。高齢社会の現在、企業にとって高齢者は貴重な戦力となりつつある。企業は、今まで培ってきた経験と豊富な知識を持っている60歳以上の従業員に今以上にやりがいを持って働いてもらえるよう、今回の調査結果を参考に、現在導入している継続雇用制度をもう一度見直してみてはいかがだろうか。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構
〜「60 歳以降の継続雇用と職業生活に関する調査」(57〜59 歳の正社員アンケート)結果〜
http://www.jil.go.jp/press/documents/20071119.pdf
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.12.03
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