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選抜人材教育の現状
●  選抜人材教育は6割が実施
  企業が将来の経営幹部の育成に向けて実施する選抜人材教育の現状と課題に関する調査がまとまった。
  実施の現状については、選抜人材教育を実施していると回答した企業は58.7%(2006年調査では57.6%、2005年では53.7%、2004年では53.7%)に上る。導入検討中の企業26.9%(2006年調査では19.1%、2005年23.9%、2004年26.9%)を含めると8割を超える。上場企業だけでの実施率は69.2%(2006年68.6%、2005年71.1%)と高い。実施している企業に対して今後の方向性を尋ねると、「今以上に力を入れたい」とする企業が51.7%(2006年51.7%、2005年54.3%、2004年51.8%)と「現状維持」の44.9%(2006年46.9%、2005年42.9%、2004年45.5%)を上回り、今後、選抜教育への取り組みは強化されそうである。
●  マネジメント全般知識を重視
  選抜教育で重視したい内容を見ると、経営戦略・マーケティング、財務・組織など「マネジメント全般の知識」が73.3%(2006年69.7%、2005年76.6%、2004年75.0%)と最も多く、組織を牽引する「リーダーシップ」が54.3%(2006年58.6%、2005年52.3%、2004年48.5%)と続く。以下、「組織の方向性やビジョンを描く構想力」が49.1%(2006年43.4%、2005年36.9%、2004年38.9%)とこれは年々重視される傾向にある。
  「多様な発想力」が31.9%(2006年27.6%、2005年27.9%、2004年25.0%)、「正しい環境認識の上での判断力」が19.8%(2006年22.8%、2005年27.9%、2004年27.8%)とこれは年々重視する割合が下がっている。「課題解決力」が29.3%(2006年19.3%、2005年24.3%、2004年24.6%)などとなっている。経営陣に加わって欲しい人材として、会社経営にかかわる幅広い知識とリーダーシップが欠かせないと考えられているようだ。2006年に比べ、構想力や課題解決力を重視する企業が増え、リーダーシップを重視する企業が減少している。
●  選抜漏れの人材へのフォローが問題点
  一方で、選抜人材教育は日本では歴史も浅く、運営についてはまだまだ問題点も多い。すでに選抜人材教育を行っている企業に対して問題点を尋ねると、最大の課題は「対象者が忙しくて時間が確保できない」(57.6%)、「教育の効果が見えない」(48.3%)、「選抜方法に納得できる基準がない」(46.6%)、「選ばれない人のモチベーションが低下する」(31.4%)と続く。時間が取れないとか、教育効果が見えないなど、実施した企業ならではの課題である。一方、選抜人材教育を実施していない企業に対して、その問題点を尋ねると、「選抜方法の納得できる基準がない」が69.0%でもっとも多い。次に多いのが「選ばれない人のモチベーションが低下する」が55.2%、「内容をどうすべきかが分からない」48.3%、「(対象者が)忙しくて受講できない」が31.0%、「教育の効果が見えない」が31.0%と続く。
  結局、選抜人材教育自体の課題点としては、選抜基準が社内的に納得できる基準がない、それに伴い選抜されなかった社員の不平・不満・モチベーションの低下が発生するという2点である。選抜されなかった人材へのフォローとしては、「再選抜の機会を与える」「別の研修プログラムを用意する」という方法がある。
  選抜人材教育はマネジメントの質を高めるうえからも今後欠かせない。ただし教育方法はOffJTの机上のプログラムでは効果が期待できないのは当然である。子会社や社外でのOJTによるマネジメントスキルの体得が効果的だろう。
出所:財団法人社会経済生産性本部『2007年度 将来の経営幹部育成に向けた選抜人材教育に関する調査』
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.12.17
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