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「割増賃金、一切支払われず」が195件:厚労省の全国一斉相談ダイヤル
●  全国合計で 1日、818件の相談
  厚生労働省では、11月を「過重労働・賃金不払残業解消キャンペーン月間」と定め、過重労働による健康障害の防止及び賃金不払残業の解消を目的とした啓発活動を実施していた。今回は啓発活動の一環として、11月23日(金)「勤労感謝の日」に各都道府県労働局において全国一斉の無料相談ダイヤルを開設した。
  全国で1日818件も相談があったが、割増賃金が支払われていないという相談が多かったのが特徴的であった。また労働者の家族からの相談も結構目立っており、かなり深刻なものもあったようである。相談があった事案のうち、問題があると認められる事案については、監督指導等により的確に対応がなされているが、まだまだこれらは氷山の一角に過ぎない。
●  相談があった業種は、商業と製造業が多い
  全国一斉ダイヤルでの相談件数は、全国で818件であり、労働者本人からの相談が539件、労働者の家族からの相談が233件寄せられた。また、相談のあった業種としては商業が165件と最も多く、次いで製造業が162件であった。
  相談内容としては、過重労働に関するものは266件、賃金不払残業に関するものは465件であった。(重複あり)
  過重労働に係る相談では、1カ月の総残業時間について100時間超えとするものが91件、80時間超えから100時間までとするものが63件であった。
  時間外労働については36協定を締結していれば、原則その締結の範囲内ということになるが、多くても月45時間以内を目安にしたいところである。時間外残業代を支払っていないのは、問題外であるが、残業代を払えば何時間でも残業をさせてもいいというわけではない。たまに勘違いしている方もいらっしゃるのでここは、注意したいところだ。過重労働により、従業員に万が一のことがあったら会社に責任があるということを肝に銘じて、コンプライアンス重視の労務管理を徹底する必要がある。
●  サービス残業代の支払命令で経営が傾く可能性がある
  残業代未払いのニュースは、大手企業のケースが多く、数十億円未払いということも珍しくない。これらは労働基準監督署から是正勧告書を受け、その結果として法律どおりに計算して過去に遡及して残業代の未払い分を支払っているわけだが、ポイントは最大で2年間遡及して支払わなければならない可能性があるということである。
  サービス残業問題は、大企業だけの話ではない。たまたまニュースにならないだけで中小企業の中にも労働者からの申告で、労働基準監督署からの是正勧告を受けて、数百万円を支払うよう指導されているところは意外とたくさんある。例えば従業員十人前後の会社が未払い残業代を遡及計算し、その結果200万円を支払わなければならなくなった企業などもあるが、会社の経営状況によっては、未払い残業代で倒産してしまうかもしれない。
  サービス残業代で倒産するということにならないように中小企業は、専門家に相談し、事前にできる限りの対策をとっておく必要があるだろう。中小企業だから弊社は大丈夫などという考え方をあらためて、一日でも早く取り掛かるのが賢明な選択といえるだろう。
出所:「過重労働・賃金不払残業解消キャンペーン月間」における無料相談ダイヤル(11月23日)の相談受理結果
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/11/h1130-1.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.12.17
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