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減価償却制度の見直しなど与党税制改正大綱を決定
●  減価償却の法定耐用年数を55区分に簡素化
  自民・公明両党は12月13日、2008年度与党税制改正大綱を決定・公表した。焦点の消費税は「社会保障費を賄う主要な財源と位置づけた上で、社会保障財源の充実を検討」と明記したが、税率の引上げ幅や引上げ時期には触れず、税制の抜本改革は先送りした格好だ。全体として小粒な改正で、減価償却制度や事業承継税制の見直し、証券優遇税制の取り扱いなどが主な改正項目となる。
  減価償却制度については、2007年度改正において償却可能限度額を撤廃するなどの抜本的な見直しを行ったが、今回はさらに、法定耐用年数について、減価償却資産の使用実績を踏まえ、機械・装置を中心に、資産区分の大括り化を図る。現在、機械・装置の種類によって390区分に分かれているものを55区分に簡素化し、耐用年数も見直す。2008年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
●  非上場株式等に係る相続税軽減を80%納税猶予に
  中小企業を対象とする事業承継税制については、「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律」(仮称)の制定を踏まえ、2009年度改正において、事業の後継者を対象とした取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度を創設。相続した非上場株式の課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予するなどが柱となる。同法の施行日(2008年10月予定)以後の相続等に遡って適用する。
  相続税の納税猶予制度の要件は、被相続人、後継者である相続人ともに、会社の代表者であった(ある)こと、被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であった(ある)場合となる。
  さらに、相続人には5年間の事業継続が求められる。要件は、(1)代表者であること、(2)雇用の8割以上を維持、(3)相続した対象株式の継続保有などである。その後、死亡時まで保有し続けた場合など一定の場合に、猶予税額の納付が免除される。また、現行は、発行済株式総額20億円未満の会社が対象だが、改正後は株式総額要件は撤廃され、中小企業基本法上の中小企業すべてが対象となる。
●  株式の軽減税率は上限を定め2年間延長
  証券優遇税制に関しては、上場株式等の譲渡益と配当に係る10%の軽減税率を2008年末で廃止し、2009年から本則税率の20%に戻すが、500万円以下の株式譲渡益及び100万円以下の配当に限っては10%の軽減税率を08・09年の2年間適用する特例措置を設ける。また、個人投資家の株式投資のリスクを軽減するため、2009年1月から上場株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算の仕組みを導入する。
  ほかでは、(1)研究開発税制・情報基盤強化税制の拡充、(2)エンジェル税制の見直し、(3)住宅の省エネ改修促進税制の創設、(4)個人住民税の1割を上限に、ふるさとへの寄附金の5,000円を超える部分を税額控除する「ふるさと納税」の創設、(5)自動車重量税など道路特定財源の特例措置の適用期限を2008年度以降10年間延長、などが盛り込まれている。
  なお周知のように、現在の国会は参院では野党が逆転する“ねじれ国会”であるため、最終決定までは紆余曲折が予想される。今後の動向には十分注意する必要があろう。
参考資料:「与党税制改正大綱」↓
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2007/pdf/seisaku-031a.pdf
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.12.25
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