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2006年中の相続税の課税割合は3年連続最低水準の4.2%
●  地価の下落による土地の評価額の低下が影響
  2006年1年間に亡くなった人は約108万人だったが、このうち相続税の課税対象となった人数は約4万5千人で課税割合は4.2%だったことが、国税庁がまとめた相続税の申告事績で明らかになった。相続で税金がかかるのは100人に4人ということになる。この課税割合4.2%は前年分と横ばいの数字だが、地価の下落を受けた結果、直近において基礎控除額の引き上げなどがあった1994年分以降では3年連続の最低水準となっている。
  相続財産額の構成比は、「土地」が47.8%でもっとも高く、「現金・預貯金等」20.6%、「有価証券」15.8%の順。土地は、地価の下落を背景に、1994年分の70.9%から一貫して減少する一方、現金・預貯金等は一貫して増加している。相続財産に占める割合が高い土地の評価が下がるにつれ、年々、相続財産の課税価格が基礎控除額(「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」)内で収まるケースが増えていることになる。
  ちなみに、路線価の基礎となる標準宅地の平均額の推移は、1平方メートルあたり25万6千円だった1994年を100とすると、年々減少をたどり、同11万4千円となった2006年は45まで落ち込んでいる。
  2006年中の相続に係る課税価格は、10兆3,668億円(対前年分比1.9%増)、これを被相続人1人あたりでみると、2億2,961万円(同1.9%増)となる。また税額は、1兆2,196億円(同5.9%増)、これを被相続人1人あたりでみると、2,701万円(同5.9%増)となっている。
●  相続税調査で4,076億円の申告漏れ課税価格を把握
  一方、2006事務年度分の相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2004年分および2005年分の申告事案を中心に1万4,061件の調査を実施し、うち85.8%にあたる1万2,061件から総額4,076億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数は1.1%減り、申告漏れ件数も0.5%減少したが、申告漏れ課税価格は5.0%増加し、1件あたりの申告漏れ課税価格では5.5%増加の3,380万円となった。
  また、加算税126億円を含めた追徴税額は939億円(対前年度比8.7%増)で、申告漏れ1件あたりでは779万円(同9.3%増)となる。一方、仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の15.1%にあたる1,820件(同2.2%増)で、その不正申告漏れ課税価格は674億円(同3.5%減)にのぼった。
  調査に基づく申告漏れ相続財産額の構成比は、「現金・預貯金等」が35.6%(1,440億円)を占め、貸付金や生命保険金などの「その他」が24.9%(1,009億円)、「土地」が16.7%(674億円)、「有価証券」が21.0%(848億円)の順だった。申告漏れの手口としては、多額の現金や公社債を自宅などに隠していたケースや、預貯金が借名・仮名や家族名義だったことから申告除外するケースが相変わらず目立つという。
  例えば、不動産貸付業を営んでいた被相続人に係る調査を実施したところ、被相続人は生前、公表外金融機関において借名預金を保有していたこと、さらに、その預金の原資は被相続人が所得税の申告から除外していた不動産収入であることも判明した。相続人は、これらの財産が被相続人の財産であることを十分認識していたが、自宅床下収納庫や貸金庫に隠し、総額約5億円相当を申告除外していた。2億円が追徴されている。
参考資料:「相続税の申告事績(2006年分)及び課税事績(2006事務年度分)」(国税庁)
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2007/6368/01.htm
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.01.07
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