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拡大を続ける労働者派遣事業
●  派遣された労働者数は2年間で4割増
  平成18年度の労働者派遣事業の状況が、厚生労働省から報告された。18年度内に実際に派遣されたことのある派遣労働者は約321万人であり、17年度255万人、16年度227万人と比べて年々急増している。ちなみに15年度は236万人であった。派遣労働者は、派遣会社に登録後、派遣先に派遣される労働者(以下、一般派遣労働者)と、派遣元に雇用されたうえで派遣先に派遣される労働者(以下、特定派遣労働者)に分けられる。321万人の内訳は前者が298万人、後者が22万人で登録型の派遣が圧倒的に多い。
  一般派遣労働者は、1年間常に派遣されていた労働者(常用雇用労働者)と、1年のうち派遣されていない期間のあった労働者(登録者)に区分されて集計されている。一般派遣労働者298万人のうち、常用雇用労働者は64万人で、17年度45万人、16年度27万人から大きく増加しており、継続して働いている派遣労働者が増えていることが分かる。
  一方、登録者は234万人で、17年度の193万人と比べ、これも増えている。登録者の年間の平均派遣労働期間は3.3カ月であり、17年度の3.9カ月からは短くなっているが、16年度の3.1カ月と比べては長くなっている。
  常用雇用労働者のうち、製造業に派遣された者は13万人で、常用全体の2割を占める。製造業派遣は17年度では3万人に過ぎなかった。
  一方、特定派遣労働者は22万人で、派遣労働者に占める割合は低いが、前年度の15万人からは増加している。このようにあらゆる派遣者の需要が高まっているのが現状である。
●  派遣受け入れ事業者は86万事業所
   一般派遣労働者の派遣先業務の種類は、事務用機器操作が47.1%(17年度45.9%、16年度48.6%)と半分近くを占め、次いで財務処理10.3%(同11.8%、同12.7%)、取引文書作成6.3%(同6.8%、同5.3%)、ファイリング4.8%(同5.3%、同5.9%)などの順となっている。なお特定派遣労働者の業務は、機械設計29.4%(同30.4%、同32.4%)、ソフトウエア開発28.5%(同29.8%、同28.7%)、事務用機器操作14.7%(同15.7%、同16.2%)などである。
   派遣先は86万事業所であり、17年度の65万事業所と比べ、3割増である。派遣会社の売り上げも全体で5.4兆円であり、17年度の4兆円、16年度の2.8兆円と比べ、これも大きく伸びている。
   このように派遣事業は急拡大しているが、派遣料金(派遣先が派遣元へ支払う料金)だけは横ばいである。一般派遣労働者の派遣料金は8時間換算で15,577円であり、17年度の15,257円からは微増にとどまっており、派遣のニーズが高まっているのに料金は上がっていない。特定派遣労働者は、22,948円と一般派遣に比べれば高いものの、17年度の23,028円とはほぼ横ばいの状態である。
   派遣賃金(派遣元が派遣労働者に支払う賃金)は、一般派遣労働者は10,571円と17年度の10,518円から微増である。特定派遣労働者は14,156円、17年度14,253円と、これは下落している。
   18年3月から製造業派遣が認められ、それが派遣労働者に含まれるようになったことから、17年度は16年度に比べて派遣料金、派遣賃金ともに下落した。しかし、18年度は微増で、やや持ち直していることが分かる。
出所:厚生労働省「労働者派遣事業の平成18年度事業報告」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.01.15
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