>  今週のトピックス >  No.1577
人材派遣業界の今後の行方は、政府の対応次第
●  派遣会社の年間売上高合計は、約5兆4,000億円
   厚生労働省が昨年12月28日発表した労働者派遣事業の2006年度事業報告の集計結果によると、派遣労働者数は約321万人で前年度に比べ26.1%増加した。年間売上高は総額5兆4,189億円(同34.3%増)に上っており、数字だけを見ると派遣業界は、成長しているがさまざまな問題もたくさんあがっている。
   偽装派遣や派遣を禁止されている業種に派遣したことを理由として、大手企業が業務停止命令を受けている。また二重派遣が発覚し、今年になってからさらなる処分が下されている企業もある。このように派遣業界は揺れているが、今後この業界がどのように変わっていくのかも政府の対応次第といえるだろう。
●  製造業務へ派遣を行う事業所の割合は、前年よりアップして18.1%
   昭和60年に労働者派遣法が制定されてから、20年以上経過し、派遣業界も今は大きな転換期にあるといえる。労働者派遣法は、時の流れとともに徐々に緩和され、平成16年3月から製造業への派遣も解禁されて現在にいたっているが、それ以前から偽装派遣の問題はあがっていたのは事実である。その偽装派遣については、昨年メディアでもたくさん取り上げられるとともに労働局から指摘を受けて、各企業は直接雇用に切り替えるなど早急に対応したが、まだまだ完全に偽装派遣がなくなったとはいえない。
   今回の偽装派遣問題のすべてが製造業への派遣というわけではないが、偽装派遣が起こりやすいのは、製造業といえるだろう。今回の調査によると製造業務へ派遣を行った事業所は、一般労働者派遣事業では3,347所、特定労働者派遣事業では1,854所、全体では5,201所となっており、労働者派遣事業の実績のあった事業所に占める割合は、一般労働者派遣事業では23.6%(前年度17.4% )、特定労働者派遣事業では12.8%(前年度10.3%)、全体では18.1%(前年度14.2% )となっている。派遣の許可を受けずに、請負契約で偽装派遣を行っているところもあると思われるので実際の数字は不透明だが、需要に応じて派遣業界は成長してきたといえるだろう。
●  日雇い派遣の今後の行方は、政府しだい
  日雇い派遣については、法律の改正を検討しているようだが、改正内容によっては派遣業界に大きな影響を与えかねない。政府は今回の日雇い派遣について、ずっと以前から状況をわかっているにもかかわらず容認してきた経緯があり、その責任を問う声が出てきている。実際に日雇い派遣で働いていた労働者も、失業状態になってしまい、この先生活することができるか不安に感じている人も多数いるようだ。
  政府は業務停止命令と同時に日雇い派遣で働く人たちの保護についても少しは考える必要があるのではないだろうか。日雇い派遣にも雇用保険の適用を訴えるユニオンなどもあるようだが、なかなか難しいだろう。
  メディアでは格差社会の象徴とされることが多い日雇い派遣制度であるが、全部が悪いと一方的に決めつけるのは問題がある。派遣会社、派遣を必要としている企業そして派遣労働者の三者が納得できるように工夫を凝らすのが政府の役割と思うので、今後の対応に注目したいところである。
出所:厚生労働省 職業安定局需給調整事業課「労働者派遣事業の平成18年度事業報告の集計結果について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/12/h1228-2.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.01.21
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