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節税効果は大幅縮小になる逓増定期保険
〜国税庁が改正通達案を公表、2月中にも適用か〜
●  現行は加入時年齢が60歳でも保険期間15年までは全額損金算入
  国税庁は昨年12月26日、中小企業が活用していた逓増定期保険の節税効果を大幅に縮小する内容の改正通達案を公表した。
  逓増定期保険は、法人が自己を契約者、役員や従業員を被保険者とした定期保険であり、掛け捨て保険のため、期間満了になると満期返戻金はゼロだが、中途解約すると先払いした部分が高額な解約返戻金として戻ってくる。また、一定の条件をクリアすれば保険料が全額損金算入できる。
  現行の一定条件とは、保険期間の経過に伴い保険金額が5倍以内の範囲で増加する定期保険で、その保険期間満了時の被保険者の年齢が60歳を超えていて、かつ、加入時の被保険者年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が90を超える場合、保険期間の最初の60%に相当する期間に支払う保険料は、2分の1を損金算入し、2分の1を前払保険料として資産計上するというものだ。
  そのほか、保険期間満了時の被保険者年齢が70歳を超えていれば、被保険者の年齢や保険期間によって3分の2から4分の3を資産計上しなければならないが、こうした条件をクリアすれば、保険料支払年度に全額損金算入できる。例えば、加入時の被保険者の年齢が50歳であれば保険期間は20年まで全額損金算入でき、同60歳であっても15年まで全額損金算入の対象となる。
  こうしたことから、生保各社では、企業が解約返戻金を役員退職金などに充当できるように、一定期間が過ぎると解約時に企業が受け取れる返戻金が急増するタイプを増やすなど、その節税効果をうたって売り込んでいたが、これを過度な節税策と判断した国税庁は、昨年3月から課税見直しを検討することを明らかにしていた。
●  改正案では全額損金算入は保険満了時の年齢45歳まで
   改正案では、保険期間満了時の年齢を45歳まで大幅に引き下げ、その他の被保険者要件も見直す。保険期間満了時の年齢が70歳を超え、加入時の被保険者の年齢に保険期間の2倍の数を加えた数が95(現行105)を超える場合、最初の60%の期間は支払保険料の3分の2に相当する金額を前払保険料として資産計上する。同様に80歳を超え、かつ同120を超える場合、支払保険料の4分の3を資産計上する。
  上記の条件をクリアすれば、保険料支払年度に全額損金算入できるが、改正案では、全額損金算入の対象となるのは、加入時の被保険者の年齢が35歳で保険期間は10年まで、同25歳でも20年までしか対象にならない。現行の取扱いと比べて、その節税効果が大幅に縮小されたことは明らかだ。
  この見直し案は、1月末まで一般から意見を募集した上で、早ければ2月中にも適用するとみられている。なお、新通達適用日以前の既契約に係る逓増定期保険の保険料については、従来どおりの取扱いとなる。
  国税庁の見直しを待って営業を自粛していた生保各社も販売を再開することになるが、どうやらこれまでの商品は販売を中止し、新しい商品を開発して販売するところが多いようだ。これまでのような節税効果を強調した商品開発は難しそうだが、どのような商品が登場するのか注目されるところだ。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.01.21
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