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労働契約法の施行で雇用ルールが変わる
●  3月1日施行される労働契約法
  平成19年11月28日の臨時国会で可決成立された「労働契約法」が3月1日から施行される。労働契約法は、その名の通り、使用者と労働者の「労働契約」について定めた初の法律である。労働者が働く際の労働条件については、労働基準法をはじめとした多くの労働法規により定められている。しかし、今日の雇用・労働をめぐる状況の多様化、複雑化により、今までの画一的で集団的な対応を前提とした労働法規では十分対応できなくなってきた。こうした中で、働く人の価値観の多様化と仕事と生活の調和、女性の社会進出、企業の人材活用の多様化などに対応した法律が求められた結果、成立したのが労働契約法である。
  労働契約法は、労働契約の基本原則、労働契約の締結、就業規則との関係、解雇など労働者が企業で働く時から辞めるまでの労使関係のさまざまな場面にかかわるルールを定めている。労働契約法の成立により、労働契約がクリアでフェアなものになっていくことが予想される。
●  判例を明確な法的ルールとした内容が特徴
  労働契約法の内容については、新たにルールを新設したというものがほとんどなく、他の法律ですでに規定されているものを移した内容となっている。また、これまでの労働契約に関するルールの多くが、裁判の判例によって形作られてきたため、ある事例では、判例の見解が妥当だとしてもそれ以外の事例では、判例の基準が妥当かどうか判断に迷う場合があり、こうしたことがないように、判例を法律で明確にルールとして定め、労働契約の公正化・透明化を図っている。
  次に、いくつかの条文を見てみたい。労働契約法では、労働契約の書面確認についての条文が盛り込まれている。労働基準法では、労働契約の内容のすべてを書面で確認することは、求められていなかった。そのため、企業が採用時に労働条件について書面を交付していないことも多い。こうした状況を受け、労働契約法では、労働契約の内容については、期間の定めがある場合も含めて、使用者と労働者との間でできる限り書面で確認することが求められている。また、有期労働契約の更新については、短期契約の反復更新を控えるよう求める規定を設けている。有期労働契約は、期間が満了すれば雇用関係を打ち切ることができるため、企業は、「雇用の調整弁」として利用している。そのため、有期労働契約者は、契約が終了するたびに雇用の不安を抱えることになり、安定した生活を営むことができない。こうした状況を踏まえ、最近増えている有期労働契約者を保護する必要から、必要以上に短い期間を定めて反復更新をすることがないよう配慮しなければならないことが規定された。
●  今後の展開次第で大きく変わる可能性を秘めた法律
  労働契約法は、条文数が少なく、内容も他の法律で規定されているものを移してきたり、これまで確立していた判例法理を盛り込んでいるだけで、全体で見ると、まだまだ未成熟な法律である印象は拭いきれない。しかし、だからこそ、今後の展開によっては、大きな変貌を遂げる可能性を秘めている法律であり、労使双方にとって公平な労働契約を実現させる拠り所となっていくことであろう。
  (庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.02.04
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