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社会保障カードの構想
●  年金・医療・介護の一体カード
  厚生労働省は、2011年度を目途に年金手帳と健康保険証、介護保険証を一体化した社会保障カード(仮称)の導入を目指している。今般、その基本構想が報告された。
  社会保障分野におけるICカードの活用については、2007年の経済財政諮問会議において、「健康ITカード」構想が発表され、同じく2007年の年金記録問題が発生したことから、年金記録の管理のあり方を見直しともからめて、社会保障カードとしての導入が検討されている。
●  保険制度間の併給調整が簡便に
  構想されている社会保障カードはICカードであり、例えば医療機関の窓口でカードを読み取ることで、保険者のデータベースにアクセスし、即時に被保険者資格の有無を確認することが可能となる。また引越しや転職によって保険者が代わることになっても、その都度保険証を返還・再交付を受けるという手間がなくなるうえ、資格情報が即座に更新されるといった加入資格の確認事務が大幅に簡素化される。
  また、例えば健康保険の傷病手当金と厚生年金の障害厚生年金といった社会保険制度間の併給調整も簡便となる。
  また被保険者自身においても、カードリーダーがあれば、所轄の社会保険事務所のデータベースにアクセスし、自身の年金記録を確認できる。また保険者が健診情報を保有するという前提付きであるが、自身の特定健診結果や診療のレセプトを閲覧することもできる。
  また社会保障にかぎらず、身分証明書として使用することも可能で、さらにはICチップの空き領域を使って、追加機能を付加することもできるとされている。
●  個人情報の集中が懸念
  こうした利便性の向上および事務の効率化が期待される一方で、留意すべき点も多い。
  従来以上の個人情報が集中して管理されることになるため、個人情報の流出とセキュリティーへの不安が増大する。逆に本人確認の精度を上げようとして、パスワードを使った運用を前提とすると、救急患者が確実に本人かどうかを知るすべがないことにある。
  その他に考えられる課題点として、社会保険制度をまたがるカードであるため、いずれの保険者が発行するのか、または新たな発行主体を設けるのかという課題もある。また確実に本人に交付する方法も課題である。
  出所:厚生労働省 「社会保障カード(仮称)の基本的な構想に関する報告書」
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP(R)、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.02.12
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