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「有事の金」暴騰、ドルの信認低下映す
●  2001年比で3倍以上
  「有事の金」「無国籍通貨」といわれる金の価格が暴騰している。サブプライムローン問題で金融市場の混乱が続くなか、最強の実物資産として注目を浴びているからだ。金の高騰は基軸通貨であるドルの信認低下とも密接な関係がある。また金を証券化した上場投資信託(ETF)の登場で投資しやすくなり、投資家層の拡大が価格を底上げしている面も見逃せない。
  金の現物価格は2月に入っても1トロイオンス(約31グラム)当たり900ドル台で取引されていて、1980年1月に付けた850ドルの最高値を更新し続けている。250ドル前後だった2001年ごろと比べると3倍以上の値が付いている。
●  混乱時の避難先
  なぜ今、こんなに金の価格が高騰しているのだろうか。金は株式や債券のように金利収入を生まず、むしろ保管のコストがかかる割に合わない金融商品だ。こんな金が魅力を発揮するのが「有事」。現在のように金融市場が混乱し、株式や債券が紙くずになってしまうリスクが高まったとき、固有の価値を持つ金は資金の避難先として脚光を浴びる。
  金はインフレに強いという定説もある。物価が上昇すれば貨幣の価値は相対的に低下する。投資家はインフレによる資産の目減りを防ぐため、固有の価値のある金に投資。金の価格が上昇するというメカニズムだ。実際1980年の金高騰の背景には、第2次オイルショック後のインフレやイラン革命など国際情勢の悪化があった。
  サブプライムローン問題に対応するため米連邦準備理事会(FRB)が大幅利下げに踏み切ったことも追い風だ。FRBは1月下旬、政策金利の誘導目標を1週間あまりで合計1.25%も利下げしたわけだが、これによって貨幣の過剰供給によるインフレ懸念が持ち上がったうえ、ドル安が加速。金の価格はドルと金の交換を保証した金本位制度の名残で、基軸通貨ドルの信認が揺らぐと上昇する逆相関の関係にあり、金の価格を一段と押し上げた。
●  ETFが投資家呼び込む
  金ETFの普及も金の価格を底上げしている。金ETFとは金の現物を信託財産として有価証券を発行し上場する仕組みで、株と同じように世界各国の証券取引所で売買できる。買っているのは年金基金などこれまで分散投資先として金に注目しながら、保管などの手間で購入を見送っていた投資家だ。現在のETFによる金の保有量は約800トンで中国人民銀行の保有量を超える規模となっている。
  このほか実需面では新興国の台頭で宝飾品や電子材料の一部として需要が高まっている一方で、世界的な金の産出量はほとんど増えていない。サブプライムローン問題が長引けば長引くほど、金の魅力は高まりそうだ。
  
2008.02.12
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