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個人事業を廃業した場合の確定申告における注意点
●  まずは廃業届の提出
  一昨年、会社法が施行して法人設立のハードルが下がったこともあり、個人事業から法人成りした方も多いのではないだろうか。そのような場合、廃業年度は事業所得等として最後の確定申告を行うこととなるわけだが、通常の場合とは異なり、注意しなければならない点がいくつかある。今回はそれらの注意点について解説していきたい。
  まず申告の前に、廃業届を税務署等に提出する必要がある。これは廃業後何カ月以内などと決められているわけではないが、早めに提出しておきたい。
●  廃業後に生じた必要経費の取扱い
  廃業届を提出し、確定申告時期が来れば、いざ廃業年度の確定申告となる。廃業年度についても、確定申告の提出時期は通常の場合と変わらない。ただ、実際に廃業年度の申告をしようとした時に最も悩むのが、廃業した後にかかった経費の取扱いではないだろうか。
  例えば、平成19年12月末日で廃業したとしても、その日をもってきっちり線引きができるわけではなく、その後もいくつか経費の支払いが発生することもあるだろう。このケースでは、1月以降にかかった経費は原則平成20年の経費となる。しかし、平成19年12月で廃業してしまうと、平成20年からは事業所得等の申告はしなくなる。つまり、経費として計上する機会を失ってしまうことになる。
  そのような事態を防ぐため、所得税には特例が設けられており、廃業後にかかった経費でも、事業を継続していれば当然かかっていたであろう必要経費については、廃業年度等に計上することができるようになっている。
●  事業税の見込み計上も可能
  また個人事業税についても、上記と同様に考えられる。個人事業税は前年の所得を基に計算されるため、実際に事業税を支払う年には既に収入はなくなっている。そのため、廃業年度の所得を基に個人事業税を計算し、その金額を見込み計上することが認められている。
  万が一申告の際に忘れていた場合には、後日事業税の金額が確定してから更正の請求をしなければならなくなるので、申告時に見込み計上を実施しておきたい。
●  棚卸資産、固定資産の法人への引継
  個人から法人成りした場合には、棚卸資産や固定資産を法人に売却して、引き続き使用する場合が多い。
  この場合、棚卸資産は事業所得等の計算上、収入として処理するが、固定資産の場合には事業所得ではなく、譲渡所得に該当する。不動産以外の車両や備品等の売却であれば総合譲渡所得となり、譲渡損が出れば、事業所得と損益通算することもできる。建物、土地等の不動産である場合には、分離譲渡所得となるため、売却損が出ても事業所得との通算はできない。
  またいずれの場合にも、消費税の納税義務者である場合には、消費税の計算に含めなければならないため、注意したい。
●  その他の注意点
  最後に上記以外の注意点をいくつか挙げておく。
  廃業年度では、貸倒引当金の計上は認められない。また廃業年度で一定の所得があった場合、翌年度で予定納税を支払わなければならない場合もあるが、その場合には減額承認申請書を提出し、予定納税を回避することも忘れずに行っておきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.02.18
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