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健保組合からの政管健保支援
●  再び悪化する健保組合財政
  健保組合の財政が再び悪化の度合いを強めている。健康保険組合連合会によると、全国の健保組合の07年度予算は、2,407億円の赤字となっている。06年度予算の1,088億円から赤字額が拡大しており、7割の健保組合が赤字となっている状況だ。
  健保組合の主な収入源である健康保険料は、健康保険法改正で08年度から保険料率の上限が95/1000から、100/1000に引き上げられることで増収が期待される一方、支出については保険給付費と老人保健等に対する拠出金が大半を占め、支出余力は引き続き乏しい。
●  健保と共済組合が1,000億円負担増
  こうした状況のなかで、国の歳出削減のために政府管掌健康保険への国からの補助金を健保組合に肩代わりさせることとなった。政管健保は、中小企業のために国が運営する健康保険制度であり、保険料収入だけでなく国からの補助金も多い。その額は07年度に8,300億円で、今後も増え続ける。
  厚生労働省は社会保障費の自然増分を毎年2,200億円抑制する方針であり、医師の技術料である診療報酬の「本体部分」を引き上げることとなったため、財政が健全な企業の健保組合等に国庫負担分の肩代わりを求めた形だ。
  健保組合や共済組合に国庫補助の一部を肩代わりさせれば、懐が痛まずに抑制が可能になる。この案に対して、経団連など財界には反対の声が弱い。経済財政諮問会議などで国の歳出削減を訴えてきたためだ。
  こうして健康保険組合連合会は、政府管掌健康保険への国庫補助の一部を、財政が比較的健保組合が肩代わりする政府・与党案を受け入れた。08年度に750億円を肩代わりする。なお共済組合も250億円を肩代わりする。
●  将来的には政管健保との財政一元化も
  負担増となる健保組合数は、全体の半数の750程度になる。医療費を従業員の報酬総額で割った「所要保険料率」をもとに負担金の額を決め、全健保組合の平均である6.1%を下回る組合が負担金を出す。ただ負担には上限を設ける。健保組合の加入者の平均報酬は640万円。組合員の平均報酬が政管健保の加入者平均の約380万円を下回る組合は対象外となる。平均すると被保険者1人あたり1万円強の負担となる。
  政管健保の保険料率は総報酬の82/1000で、これを労使で折半している。医療給付費と老人保健拠出金の一部を国の補助で賄っている。
  健保組合の保険料率は、平均74/1000で国庫補助はない。厚労省や財務省は大手企業と中小企業との料率差を是正し、将来に両制度を一元化するための布石として、肩代わりを容認するよう求めてきた。
   出所:健康保険組合連合会HP等
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.02.25
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