>  今週のトピックス >  No.1597
2008年4月スタートの新診療報酬が決まる
〜在宅医療を支える訪問看護に注目〜
●  新診療報酬は、実際に病院勤務医の負担軽減につながるのか
  2008年4月より適用される新たな診療報酬が、2月13日の中央社会保険医療協議会において正式に決まった。最大の焦点だった勤務医の待遇改善策に絡んだ部分については、当初骨子案に示された診療所の再診料引き下げに日本医師会等が強硬に反対し、結局病院側の再診料を3点アップの60点にすることで決着をみた。現行71点の診療所の再診料との差は縮まったものの、まだ11点差あることを考えれば、病院から診療所への患者誘導の効果があるかどうかは極めて疑わしい。
  この点について、中医協が答申書の中で「実際に病院勤務医の負担軽減につながったかを検証すること」という意見をつけている。検証のための調査手法などについて、今後はさらなる議論の高まりが予想されるだろう。
●  在宅療養の受け皿の確保はできるのだろうか
  ともあれ、ここではもう一つのテーマをチェックしてみたい。療養病床の削減や後期高齢者を中心とした入院期間の短縮が進む中、在宅療養の受け皿が確保できるのかどうかという点だ。ポイントとなるのは、訪問看護への評価がどれだけ報酬に反映されたかである。
  例えば、末期がん患者などが在宅療養に移行する場合、在宅の療養環境に慣れるまで様々な不安定要因が発生する。訪問看護ステーションにとっては、この時期をどう乗り切るかがその後の療養生活を大きく左右することになる。そこで、患者が退院したその日に訪問看護師等が在宅を訪問し、療養上必要な指導を行った場合に加算する「退院支援指導加算」が新設された(6,000円)。
  なお、これまでは患者の入院中(あるいは老人保健施設等に入所中)については、退院・退所前に主治医と訪問看護師が共同で在宅での療養生活指導を行った場合に、「地域連携退院時共同指導加算」がついていた。
  こちらは、改正前の加算が在宅療養支援診療所とそれ以外の医療機関で加算額に差をつけていたものを一本化し、「退院時共同指導加算」として6,000円が訪問看護ステーションに支払われることになる。つまり、どのような地域医療環境においても、退院前後でしっかりと訪問看護ステーションが療養支援を行えることを狙ったものだ。
  さらに在宅医療を進める中で、かかわっている医療・福祉サービス関係者の間で情報共有や情報提供などを行った場合に、「在宅患者連携指導加算」として月1回3,000円の加算が可能となった。また、病状が急変した際に関係者間でカンファレンスを開催した場合、「在宅患者緊急時等カンファレンス加算」として月2回2,000円の加算がつく。
●  訪問看護師の業務範囲・権限のあり方の行方は
  問題は、こうした指導や連携の中身をいかに機能させるかということだ。現場における訪問看護の状況を見ると、ここ数年でコミュニケーションやコーディネートの能力に長けた人材が飛躍的に育っている印象がある。だが、今後は医療依存度の高い患者がどんどん在宅へと戻ってくることを想定すれば、訪問看護師の業務範囲・権限のあり方やそれに応じた教育のレベルアップも必要になるだろう。国には、こうした人材育成を進めるための積極的な追加施策を期待したい。
(田中 元 医療・福祉ジャーナリスト)
2008.02.25
前のページにもどる
ページトップへ