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国会に提出された「事業承継円滑化法案」
●  事業承継税制の抜本拡充の基礎となる法案
  事業承継税制の抜本拡充や民法上の遺留分制度の制約への対応を始め、事業承継円滑化のための総合的支援策の基礎となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案」(事業承継円滑化法案)が今国会に提出されている。
  同法案の主な内容は、(1)2008年度中に相続税の課税について必要な措置を講ずる旨を規定、(2)遺留分に関する民法の特例を創設、(3)金融上の支援措置、などだ。
  相続税の課税措置については、同法案中で「2008年度中に、中小企業における代表者の死亡等に起因する経営の承継に伴い、その事業活動の継続に支障が生じることを防止するため、相続税の課税について必要な措置を講ずるものとする」とされており、2009年度税制改正において「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」を創設し、事業承継円滑化法の施行日(今年10月1日予定)に遡って適用することが予定されている。同制度は、一定の雇用確保や5年間の事業継続などを要件に、後継者が取得した非上場中小企業の株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税を納税猶予するものだ。
●  生前贈与株式を遺留分の対象から除外
  民法の特例は、(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外する、(2)生前贈与株式の評価額をあらかじめ固定する。一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員と合意し、その合意が事業承継の円滑化を図るために行われたことについて経済産業相の確認、家庭裁判所の許可を受けたときに、特例の適用を受けられる。
  また、従来の遺留分放棄は、当事者全員が個別に申し立てを行うことが必要だったが、後継者が単独で申し立てができる。
  この特例の創設によって、生前贈与された株式が遺留分減殺請求の対象外となるため、相続に伴う株式の分散を未然に防止できる。また、生前贈与後に貢献者の貢献によって株式の価値が上昇したときでも、その上昇分が遺留分減殺請求の対象外となるため、相続開始時点の上昇後の評価で計算されることもなく、後継者の経営意欲が阻害されないことなどが期待できる。
●  事業承継に伴う資金ニーズにも対応
  金融支援については、経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達を支援するため、経済産業相の認定を受けた中小企業者やその代表者に対して、(1)中小企業者の資金の借入に関しては、中小企業信用保険法に規定する普通保険等を別枠化する特例、(2)中小企業者の代表者に対しては、株式会社日本政策金融公庫および沖縄振興開発金融公庫が必要な資金を貸し付けることができる特例をそれぞれ設ける。
  これらの支援措置によって、親族外承継や個人事業主の事業承継を含め、株式・事業用資産の取得資金や信用力低下時の運転資金、相続税負担など、幅広い資金ニーズに対応する考えだ。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.02.25
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