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今春の新卒採用人数は、「計画より減少」
●  変わりつつある就職・採用活動状況
  株式会社リクルートの発表によると、2008年新卒者の採用人数について、39.4%の企業が「計画より少ない」と答えており、企業の採用難の状況が続いていることが分かった。この発表は、新卒者の就職活動や企業の採用活動の状況を取りまとめた「就職白書2007」の調査結果による。その他の調査結果を見ると、企業の51.2%が新卒採用のスケジュールの早期化を指摘し、2009年の新卒採用の見通しも「早まる」が41.4%にのぼった。
  少子化による学生の減少を受けて、年々企業の新卒者の採用が難しくなってきている。新卒者は、生え抜きの人材として、企業は将来の幹部候補として育成し、企業の成長と将来性を担っていくだけに採用計画においても重要な意味合いを持つ。一方、学生側も少子化により売り手市場だと思って安心してはいけない。企業は、採用において人材レベルを下げるどころか、むしろ人材レベルを上げている状況もある。今回の調査結果は、こうした採用状況の中で企業と学生が今後どのような取り組みをしていくべきかの指針となると思われる。
●  人材レベルを重視する企業の採用活動
  調査結果から、約4割の企業で採用人数が計画より少ないと答え、依然として採用人数が計画を下回る傾向が続いていることが明らかとなったが、これは、学生が集まらないのではなく、企業が求めるレベルを満たす学生が集まらないのが原因である。調査結果でも「求める学生が思うように集まらなかったが、基準を下げてまで採用しなかった」が67.0%で最も多く、採用難でも人材レベルを下げたくないという企業の姿勢がみえる。このことから推測すると、学生が就職活動を通して得る内定社数(2.33社)が4年連続で増加しているといっても、実際には、優秀な学生か、そうでない学生かによって、内定社数に大きな開きがあるのではないだろうか。学生が内定を勝ち取るためには、企業が求めるレベルの人材となるために自己を高める努力を今まで以上にしなければならないだろう。
  また、新卒採用スケジュールを見ると、昨年に比べ「早まった」と答えた企業は5割を超え、2009年の新卒採用スケジュールについても約4割の企業が「早まる」見通しであると答えている。この背景として82.9%が「優秀な人材の確保」、56.9%が「競合対策」を挙げており、ここからも、より優秀な人材を確保したい企業の姿勢が見て取れ、そのために採用競合に先駆けて活動を開始する企業が多いことが分かる。
●  ギャップをなくすことが今後の課題
  採用では、まだまだ企業と学生のギャップが大きい。このギャップについては今回の調査でも、自己分析や業界研究などについて、学生は「十分」と思っているが、企業はそれほど評価していないという結果が出ている。また、学生に対する企業情報の提供では、学生が「強く知りたいと思っていた」割合が5割以上の項目のうち、実際の勤務時間や残業時間などの労働実態や人間関係などについては、実際に「知ることができた」割合が50%台にとどまっており、働く上でのよりリアルな情報の提供を学生が望んでいることが読み取れる。
  新卒採用における就職・採用活動が厳しくなる中で、企業も学生もこうしたギャップを無くすよう心がけ、取り組むことで、内定者辞退や早期退職がない双方が納得のいく採用活動、就職活動の実現に近づくのではないだろうか。
出所:株式会社リクルート
「就職ジャーナル版『就職白書2007』〜就職・採用活動状況のまとめ〜」
http://www.recruit.jp/library/job/J20080219/docfile.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.03.03
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