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日本学術会議、タバコ税の大幅引上げを提言
●  タバコ価格の引上げはタバコ規制に不可欠
  日本学術会議は3月4日、「脱タバコ社会に向けて」と題した要望書を公表し、(1)喫煙率削減の数値目標の設定、(2)職場・公共の場所での喫煙の禁止、(3)タバコ自動販売機の設置の禁止などとともに、(4)タバコ税を大幅に引き上げ、税収を確保したまま、タバコ消費量の減少を図ることを提言した。
  わが国において2006年に実施されたタバコ税・価格の引上げは、1本1円の小幅なものにとどまったことから、脱タバコ社会に向けた施策の一環として、さらなる引上げを求めている。
  同要望書によると、日本の成人男子の喫煙率は徐々に減少しつつあり、2005年には39.3%となり、初めて40%割れとなったものの、英米に比べると突出して高いレベルにある。日本の成人女性の喫煙率は2005年で11.3%だが、若い世代では増加している。
  また、わが国も批准し、遵守・履行が求められている世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組条約」において、タバコ価格の十分な引上げはタバコ規制にとって非常に重要かつ不可欠な施策とされている。
  同条約の締結国に提供している政策実施のための実際的な指針においては、 (1)タバコの価格引上げは、消費を単独で減らすことができるもっとも有効な方法であり、紙巻タバコの価格を10%引き上げると、高所得国では5%、低・中所得国では8%までの低下につながる、(2)全世界でタバコ税10%の増税による紙巻タバコ価格の引上げは、実際には税収を7%増加させ……世界中で喫煙者が推定4,200万人減少し、1,000万人の命が救われる、ことを明確に示していると指摘している。
●  タバコ税の増税で、税収を確保したまま、喫煙量や喫煙者数の削減が可能
  一方、日本政府はこれまでタバコ税の引上げについて、タバコ消費を減少させるための観点からその必要性を議論することには消極的だった。このため、現在でもわが国のタバコの負担(消費税を含め一箱につき約189円)の水準は、同じ喫煙率の高いドイツに比べても、その半分程度に過ぎず、英国の一箱につき付加価値税を含め約4.0ポンド(約944円)よりはるかに低いと指摘した。
  そこで、日本政府に対し、現実的な第一段階として、現在のタバコ税を2倍に引き上げることを検討するよう要望している。
  また、喫煙率やタバコの需要に関する欧米のコンセンサス弾力性の値を使った試算を示し、現在のタバコ税を一箱につき180円増税すると、税収は約2.1兆円増加し、タバコの消費量は4分の1減少し、喫煙者数は最低でも200万人以上減少するとの見込みを示している。
  日本学術会議は、タバコ税の増税により、税収を確保したまま、喫煙量や喫煙者数を減らす効果が期待できることは世界共通の認識となっていると強調。とりわけ購買力の弱い未成年者の喫煙率削減効果をもたらすことは異論のないところとして、タバコ税の大幅な引上げを求めている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.03.17
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