>  今週のトピックス >  No.1614
申告期限後の還付申告は住民税の負担増に注意!
●  翌年以降、5年間できる還付申告
  2007年分所得税の確定申告は今月17日までで終了した。給与所得者で1年間の給与収入が2,000万円以下の申告義務がない人でも、医療費控除や雑損控除などを適用して還付申告を行った人も多いと思われる。その還付申告は、通常の確定申告と違い、期限後に申告を行っても、無申告加算税などのペナルティが課されることはない。また、還付申告は、翌年の1月1日から5年間申告できることになっている。
  したがって、過年分も含めて期限後に還付申告を行っても特に問題はないが、還付申告はあくまで所得税に限った話である。住民税に関していえば、医療費控除のように、住民税でも所得金額から同様に控除され、減少する場合も確かにある。過年分を申告した場合は、その年分の住民税から一括で減額されるので大歓迎だろう。しかし、なかには“寝耳に水”の負担増となるケースも出てくるので注意したい。
  例えば、サラリーマンが本来申告義務のない20万円以下の副業収入を原稿料などで得た場合に、その副業所得について還付申告を行うケースだ。所得税の場合は、原稿料については支払い時に原則10%の税率で源泉徴収されているが、原稿料には経費が認められることから還付されることが多い。また、少額配当以外の配当所得についても、20%の税率で源泉徴収されているため、配当控除を行うことで還付となるケースが多い。
  ところが、住民税には源泉徴収されて事前に納付している税額は一切ないため、所得税の還付申告を行った時点で、配当や原稿料に相当する所得がそのまま住民税の課税所得に取り込まれることになる。特に、所得税を過年分も含めて期限後申告した場合には、住民税が一気に増加することもある。住民税まで考慮して所得税の還付申告を行う人は少ないだろうが、“寝耳に水”の思わぬ負担増とならないように、住民税の負担増も頭に入れておきたい。
●  過大な還付申告は過大部分に過少申告加算税
  ところで、例年、還付申告では、知識不足や勘違いによって還付税額を過大に申告するというミスが目立つという。過大に所得税の還付を受けた場合、税法上もペナルティが課されることになるので注意が必要だ。
  よくある過大還付申告のミスでは、医療費控除額の計算において、出産などに際しての入院給付金や分べん費の補てん額など、本来差し引くべき保険金等で補てんされる金額を差し引かずにグロスの医療費を医療費控除額としてしまうケースがある。また、雑損控除額の計算でも、損失額から保険金などで補てんされる金額を差し引かずに申告してしまい、還付税額が過大となることも少なくないようだ。
  還付申告といえば納付税額が生じないため、過大還付であってもペナルティは課されないと思っている人もいるようだが、過大還付となれば、結果としてその分所得税の納税が過少になるため、その過大部分については過少申告加算税が課されることになる。例えば、40万円の還付申告を行い、結果的に30万円が過大だった場合は、その過大分について過少申告加算税が10%課され、差し引き還付税額は7万円ということになる。
  もっとも、過大還付に気付いて納税者が自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は免除されることになる。ただしこの場合でも、延滞税については原則課税されることになるので留意したい。こうしたことから、確定申告は終わったばかりだが、還付申告の内容をもう一度見直して、保険金等で補てんされる金額を差し引かないなどのミスがないかどうかをチェックすることをお勧めしたい。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.03.24
前のページにもどる
ページトップへ