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横這い続く賃金
●  男女の賃金格差は雇用コースも原因
  厚生労働省から、2007年の賃金統計調査の結果が報告された。ここでいう賃金とは、2007年6月単月の賃金をさし、また賞与や残業手当は含まれていない。
  まず言えることは、賃金額の横這いが長く続いているということである。図表1(縦軸は賃金額、単位は千円、以下のグラフも同じ)にあるようにここ10年間男女とも賃金は横這いである。景気拡大が長期間にわたって続いているにも拘わらず、である。企業業績が好調であっても一時金として配分されることが多いため、賃金に反映されていないとみることもできる。
  次に労働者の年齢階級別にみると(図表2)、男女ともS字曲線を描き、50歳代後半になると賃金の伸びが鈍化する。また男女別では、男女とも新卒では賃金はほぼ同一水準であるが、その後の伸びが男女で異なり、女性は30歳代後半から伸び悩み、40歳代後半では14万円以上差が開いてしまう。なお、これは大卒・大学院卒の平均値である。それでもこれだけ賃金格差が存在している。
●  企業規模での賃金格差は年齢により拡大
  女性は結婚・出産で退職することが多く、それが賃金格差の原因であると考えられるので、男女の標準労働者を用いて比較したのが図表3である。標準労働者とは学校卒業後(図表3では大学卒業後)、キャリアの中断なく働いている労働者をさす。それでみても年齢階級が上がるほど男女差が開く。これで見る限り男女の賃金差は、結婚・出産によるキャリアの中断だけではなく、入社時の雇用コースによるものではないか。
  企業規模別でもやはり顕著な差がある(図表4)。図表でいう大企業とは従業員1,000名以上、中企業とは100名以上を指す。入社時点では、業規模ごとの賃金格差は存在しないが、次第に格差は拡大している。企業規模によって賃金の上昇が鈍くなり、横這いになる時期が異なるということである。
【図表1 男女別賃金の推移】
【図表2 男女別年齢階級別賃金】
【図表3 男女別年齢階級別賃金(標準労働者)】
【図表4 企業規模別年齢階級別賃金】
出所:厚生労働省 「平成19年賃金構造基本統計調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.03.31
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