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新入社員タイプの変遷
●  今年の新入社員はカーリング型
  平成20年の新入社員タイプは「カーリング型」であると、(財)社会経済生産性本部が命名した。これは昭和48年から現代コミュニケーションセンターが命名してきた新入社員のタイプ名を、平成15年から生産性本部が引き継いで命名している。
  カーリング型とは、「新入社員は磨けば光るとばかりに、育成の方向を定め、そっと背中を押し、ブラシでこすりつつ、周りは働きやすい環境作りに腐心する。しかし、少しでもブラシでこするのをやめると、減速したり、止まってしまったりしかねない。会社への帰属意識は低めで、磨きすぎると目標地点を越えてしまったり、はみだしてしまったりということもある」という意味だそうだ。
  ちなみに表にあるように、昭和48年入社の社員は、かつてはパンダ型で「おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変」と命名されていた。今や企業の経営層となっている社員もかつてはこのように皮肉な目でみられていたのである。
  表にある35年間の命名の変遷をみると、タイプ名は時流や流行を反映して移り変わっているものの、その特徴にはいくつか面白い傾向が見られる。
  まず昭和入社の社員に対しては、「今年の新入社員は扱いにくい」と常に思われている。「人になつかず」、「群れからはずれやすく」、「他と音程合わず」、「扱い方も難しい」などという単語が並んでいる。当時は「新人類」という言葉もあり、新入社員は自分たちとは違う価値観を持っていると見られていた。また「画一的」、「見た目はきれい」、「大きさと形は同じ」など個性の不足を指摘するコメントも多い。
●  転職が懸念される新入社員
  それが平成に入るにつれて、「改良次第」、「煮ても焼いても食えそう」、「情報処理能力」など潜在能力の高さが評価されるようになってきた。ただし、「装着の具合次第」「読取機次第」「うまくいけば必需品」「育成方法の向上次第」、「中高年には使いこなしきれない」、「型くずれ防止必要」など、その能力を生かすには指導・育成次第であることも念押しされている。さらに、「メンテナンスが必要」、「評価をしないと」、「叱責に弱い」、「温かい眼差しと共感が必要」、「こするのをやめると、減速したり、止まりかねない」など、ほめながらやる気を引き出す必要があるとしている。
  これらを総括すると、昭和入社の新入社員は「組織になじまないうえ個性もないが、仕事を通じて自分たちのような社員になるだろう」という期待がある一方、「会社人間」としても同質性が求められている。
  昭和の終わりから平成初頭でバブル期が終わりを告げた。これにより、国際化、IT化の進展で会社員に新しいスキルが求められるようになった。また、これまでのビジネスの手法だけでなく、新入社員のスキル・能力も見直されるようになった。そして会社はそれをうまく社業に生かすような育成・指導方法を模索している。さもないと会社人間の時代と異なり、会社への帰属意識は低目なため、“社外流出”という危険があるからである。「目標地点を超えてしまう」というコメントにも、転職への懸念が見て取れる。
  その意味で、新入社員や若手社員にとって魅力ある会社になることが、経営者にとってもテーマといえる。
  【新入社員のタイプの変遷】
入社年度 タイプ 特徴
昭和
48
パンダ おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変。
49 ムーミン 人畜無害でおとなしいが、大人か子供か得体知れず。
50 かもめのジョナサン 群から外れやすく、上空からしらけた眼で見ている。一方でめざとい。
51 たいやきクン 頭から尾まで過保護のあんこがギッシリ。
52 人工芝 見た目はきれいで根が生えず、夜のネオンでよみがえる。
53 カラオケ 伴奏ばかりで他と音程合わず。不景気な歌に素直。
54 お子様ランチ 何でもそろって綺麗だが、幼さ抜けず歯ごたえなし。
55 コインロッカー こじんまりと画一的で、外見も反応もすべて同じ。
56 漢方薬 煎じ方が悪ければ、効き目がなく副作用を生じる。
57 瞬間湯沸し器 新式と旧式の二種類存在し、反応・熱意が正反対。
58 麻雀牌 大きさと形が同じで並べやすいが、中身はわからず。
59 コピー食品 外見のみ本物風で手間いらずだが、歯ごたえなく栄養も心配。
60 使い捨てカイロ もまないと熱くならず、扱い方も難しい。
61 日替わり定職 期待した割には変わりばえせず、同じ材料の繰り返し。
62 テレホンカード 一定方向に入れないと作動しないし、仕事が終わるとうるさい。
63 養殖ハマチ 過保護で栄養分は高いが、魚らしくピチピチしてない。
平成
液晶テレビ 反応早いが、値段高く色不鮮明。改良次第で可能性大。
2 タイヤチェーン 装着大変だが、装着の具合次第で安全・駆動力OK。
3 お仕立て券つきワイシャツ 価格が高く仕立てに時間かかり、生地によっては困難。
4 バーコード 読み取り機(上司)次第で、迅速・正確・詳細な処理可能。
5 もつ鍋 一見得体知れずで厄介だが、煮ても焼いても食えそう。
6 浄水器 取り付け不十分だと臭くまずいが、うまくいけば必需品。
7 四コママンガ 理解に時間がかからず、傑作もある一方で、市場にあふれているので、安く調達できる。
8 床暖房 断熱材(評価)を入れないと熱(ヤル気)が床下(社外)に逃げる。
9 ボディシャンプー 泡立ち(適応性)が良く、香り(個性)も楽しめるが、肌(会社体質)に合わないこともある。石鹸(従来社員)以外に肌を慣らすことも必要。
10 再生紙 無理な漂白(社風押しつけ)はダイオキシンが出るが、脱墨技術(育成法)の向上次第で新タイプの紙(新入社員)として大いに市場価値あり。
11 形態安定シャツ 防縮性、耐磨耗性の生地(新人)が多く、ソフト仕上げで、丸洗い(厳しい研修・指導)OK。但し型くずれ防止アイロン(注意・指導)が必要。
12 栄養補助食品 ビタミンやミネラル(語学力やパソコン活用能力)を豊富に含み、企業の体力増強に役立ちそうだが、直射日光(叱責)に弱く、賞味期限(試用期限)内に効果(ヤル気)が薄れることあり。
13 キシリトールガム 種類は豊富、価格も手ごろ。清潔イメージで虫歯(不祥事)予防に効果ありそうで、味は大差ない。
14 抱きつき枕 クッション性あり、等身大に近いので気分いいが、上司・先輩が気ままに扱いすぎると、床に落ちたり(早期退職)、変形しやすいので、素材(新人の質)によっては、いろいろなメンテナンスが必要となる。
15 カメラ付携帯 その場で瞬時に情報を取り込み発信するセンスや処理能力を持ち、機能も豊富だが、経験や知識がなかなか蓄積されない。また中高年にとって使いこなしきれない側面もある。
16 ネットオークション ネット上で取引が始まり、良いものには人気が殺到しさっさと売れる一方で、PR不足による売れ残りも多数。一方で、ブランド名やアピールに釣られて高値で落札したものの、入手後にアテが外れることもある。
17 発光ダイオード 電流を通す(ちゃんと指導する)と、きれいに光る(いい仕事をする)が、決して熱くはならない(冷めている)。
18 ブログ 表面は従順だが、さまざまな思いを内に秘め、時には大胆に自己主張する。認められたい欲求が強く、温かい眼差しと共感が育成の鍵。
19 デイトレーダー 細かい損得勘定で銘柄の物色を継続し、安定株主になりにくい。売り手市場だけに早期転職が予想される。ネットを駆使した横のつながりで情報交換は活発だが、情報に踊らされない慎重さも必要。
20 カーリング 新入社員は磨けば光るとばかりに、育成の方向を定め、そっと背中を押し、ブラシでこすりつつ、周りは働きやすい環境作りに腐心する。しかし、少しでもブラシでこするのをやめると、減速したり、止まってしまったりしかねない。
会社への帰属意識は低めで、磨きすぎると目標地点を越えてしまったり、はみだしてしまう。
参考:財団法人社会経済生産性本部「平成20年度・新入社員のタイプは「カーリング型」」
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.04.07
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